ワシがサボテンに停まってヘビを咥えている場所①

私の主宰するユーラシア21研究所の近くにはインド、イタリア、フランス、韓国など多国籍の料理店がいろいろ並んでいますが、メキシコ料理店もあり、私は毎日のように、入り口の前に立つ国旗を拝見しています。(つまり、中に入ったことはないということ!)


1968年のメキシコ五輪以来のメキシコの国旗

著名なデザイナーであるヘルゲラが調整した国章

先日の小欄ではそのレストランが掲げているメキシコの国旗が逆さまだということまで書いてしまいましたが、G20財務相・中央銀行総裁会議が開かれたことでもあり、メキシコの国旗を少し復習してみましょう。

この国旗の特徴は、なんと言っても、ワシ(鷲)がヘビ(蛇)を咥えて、湖に突き出た岩に生えるサボテンに立つというアステカの伝説に由来するデザインの国章です。それが無くてはイタリアの国旗と区別がつきませんし、現に、このレストランはイタリア料理店と向かい合っているのですから、「私が」困ります。もう一つ困るのは、私はヘビ年生まれ。来年の干支で何となく幸せに慣れそうな気分なのはいいのですが、もしかしたら、トリ(鷲)年生まれの人に虐められはしないかと、この国章を見ては思うのです。

閑話休題。この国章、現在のデザインになったのは1968年9月16日。メキシコシティでオリンピックが開かれたのはその約1ヵ月後。日本がサッカーで「想定外」の銅メダルの栄光に輝いたオリンピックが同年10月12~27日まで開催されたのです。つまり自国での五輪開催直前にデザインを補正したというわけです。

担当したのは、メキシコ出身の画家で彫刻家でもあり、切手やコインのデザイナーとしても著名なフランシスコ・ヘッペンス・ヘルゲラ(Francisco Eppens Helguera 1913~90)がそれまでのものをまとめたものです。

メキシコは東京オリンピックの次の開催地でした。ところが、私が東京オリンピック組織委員会国旗担当専門職員として準備したのはメキシコ五輪での国旗(現在に至る)とは少し違うんです。組織委解散後、日本ユネスコ協会連盟「世界の国旗」専門委員会(藤沢優委員長)を創ってそこに全部、資料を供託しました。文部省と日本商工会議所が助成してくれましたので、それらをまとめて共著『国旗総覧』を刊行しました。その1ページから、東京五輪で使用したメキシコの国旗の国章がこの1934年以来の国章の付いたものです。

もっとも、蛇を咥えた鷲という構成はアステカの皇帝たちが好んだ図柄でもあり、独立以前からほぼ一貫して国章に使われていました。ただ、周辺のリースwreathが上まで円形になっていたりした変化があったということです。


1823~64年までと1867~93年までのメキシコの国旗。
その間はハプスブルク家のマクシミリアン(フランツ・ヨーゼフ帝の弟)による帝政時代で別の種類のデザインの国旗だった。

1893~1916年までのメキシコ国旗

1916~34年までのメキシコ国旗
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