読売新聞社が主催して、9月16日から3日間、東京ドームで行われるはずだったヴェローナ歌劇団による東京公演が入場券の売れ行きが悪く、中止となった。地下鉄の駅の壁にはかなり前から大きなポスターが貼られて宣伝していたが、「S席税抜7万円というのでは」と自分の財布の薄さに照らして、目をつぶって通り過ぎていた。
古代エジプトの旗印
100年前と同じしつらえでの公演。
ヴェローナのコロッセオは全イタリアで3番目に大きいが未だ大部分が使用に耐える状況だ。
古代ローマではここで人間と動物、人間同士の文字通りの死闘まで行われたという。
それが今回、イタリアを訪問する機会があり、本場で同じものを堪能できた。場所は2000年前に造られた円形劇場。ヴェルディ生誕200年の今年、それも、「アイーダ」がそこで初演されてちょうど100年目の同じ8月10日に、当時と同じ舞台装置でという記念すべき一夜であった。20,000人も入っているのだが、もちろんマイクなし。コロシアムというのは実に響きがいいことも分かった。S席、前から13列目のド真ん中。4頭出た白馬の瞼のまばたきまで見える。申し訳ないほどいい機会をいただいた。
入場料? 地元ですからもちろん7万円の半分よりかなり下。
開演が2100、終演は0120。イタリア気分とエジプト情緒を堪能した。
ところで、小欄は国旗の話。感心したのはエジプト軍の旗章も忠実に再現していたこと。「撮影禁止」とは書いてあるが、あちこちで観客がシャッターを切っている。どうせ光が届かないフラッシュなど使用せず、手ぶれをしないように気を付けて、そうっと、2、3枚、旗に関わるところだけ撮らせてもらった。夜中の1時に、こんな撮影をしたのは、72年も人間をしていて初めてのこと。このようななんとか撮影できた。「今のカメラはいいね」と呟いた。