ソチ五輪と「隣国」アブハジアについては、朝日新聞の駒木明義モスクワ支局長も、ソチから報道している。2月7日の朝刊から転載する。
アブハジアの国旗
■厳戒の国境地帯 分離独立求めるアブハジア
五輪公園から4キロ先の国境で、ロシアに隣接しているのは、グルジアからの分離独立を求めているアブハジア共和国だ。五輪を控え、国境地帯は厳戒態勢が敷かれている。上空には無人の飛行船。カメラらしきものをぶら下げており、下界を監視しているようだ。アブハジアは、グルジアから見れば自国の一部、ロシアから見れば独立国という不安定な地域だ。
2008年の北京五輪開幕の日に始まったグルジア紛争をきっかけに、ロシアはグルジアから分離独立を求めているアブハジアと南オセチアの独立を承認。グルジアは激しく反発しロシアとの外交関係を断絶した。アブハジアでは昨年9月、ロシア人外交官が殺害される事件も起きた。
国境のロシア側には街道沿いに食料品や日用品を扱う商店がずらりと並んでいる。1カ月前に訪れたときはバザールのようなにぎわいだったが、今は人通りも少なく、シャッターを下ろしている店が多い。
ソチは、アブハジアのナンバープレートをつけた車が数多く走る街だった。ところが今は一台も見ることができない。五輪開幕1カ月前から、ソチへの他地域からの車の乗り入れを禁じたためだ。こうした措置はパラリンピックが終わる3月末まで続く。
1月初めに会ったアブハジア人運転手は「仕事で毎日ロシアとアブハジアを行き来している。親戚が双方にいる人も多い。通行止めなんてできるわけがない」と話していた。それがいまでは徒歩での越境は可能だが、ロシア側に入るにはパスポートを3回チェックされる。厳しい規制が続けば、ロシアに経済的に依存するアブハジアにとって、五輪は大きな打撃になる。
グルジアでは昨年、グルジア紛争を招いたサアカシュビリ大統領が退陣。ロシアとの関係修復を掲げるマルグベラシビリ大統領が就任したが、ロシア側はアブハジアと南オセチアの独立状態を固定化しようとしており、グルジアとの外交関係回復の見通しは立っていない。