先般もあるテレビ番組で「一番好きな国旗は?」と訊かれ、「日の丸を別にすれば、ウクライナかな」と答えた。1930年代に起こった世界的穀倉地帯であるこの国の大飢饉というあまりに悲惨な歴史を思うと、この国旗に対面するときには、特別の感情を呼び起こしてしまわざるを得ない。
今、成り行きが注目されているウクライナの国旗は空と麦畑を表わしている。ウクライナのチェルノーゼム(Чернозём=黒土)地帯はアルゼンチンのパンパス、アメリカのプレーリーと並んで世界三大穀倉地帯として挙げられている。
しかし、歴史は1932年から翌年にかけてのウクライナにもたらされた大飢饉による餓死をしっかりと記憶している。ジェノサイドか「人道に対する罪」かについては見解の分れるところもあるが、統計によって大きな差異があるにせよ、400万人から1,450万人もが死亡したとみなされている。
これは第一次世界大戦中にオスマン・トルコによって行われたアルメニア人の虐殺、第2次世界大戦中のナチス・ドイツによるホロコースト、1970年代後半のカンボジアにおけるポル・ポト派による虐殺、1990年代半ばにルワンダで行われた虐殺等と並んで20世紀の最大の悲劇の一つであるという見方もできよう。