世界一高い山と国旗の物語④

エクアドルとボリビアの国旗にはコンドルが描かれています。


エクアドルの国旗

ボリビアの国旗

この鳥は南米特産で、この2カ国のほかチリコロンビアの計4つの国の国鳥になっています。しかし、今や絶滅危険な種に指定され、一時の17羽からかろうじて200を超える固体数に回復してきましたが、まだまだ危険な状態です。出生率の低さ、繁殖年齢の高さ、一生を1つがいで過ごす習性は、すべて生息数を減らしてしまう要因になっていますが、間接的な人類の活動が致命的な影響を与えていることも確かです。すなわち、ハンターが哺乳類等地表の動物を射止め、それを適切に持ち帰ったり処理しないで腐ったものをコンドルが食べたり、弾丸の薬品で中毒をおこしてしまうのです。

北方領土の近くにはオオワシという天然記念物やエトピリカという可愛い鳥がいます。これらの鳥も、猟銃で撃ったエゾシカの屍骸等を食べて中毒を起こしたりして、数を減らしています。猟師のみなさん、「動物を殺すな」とばかりは言いません。しかし、狩った動物はきちんと運びましょう。

さて、話をコンドルに戻します。

コンドルの大きさは、クチバシから尾の先までがおよそ1.2m、両翼の端から端の長さがおよそ3mで、10kg以上になるのが普通です。首が白いリング状になっているのと、頭頂部に毛がないことです。毛のないのは、屍肉を食べるときに頭を突っ込むのですが、毛があると不衛生になることからの進化だとされています。

南米コンドルは巣作りと繁殖を人間などが近寄れない絶壁の岩陰で行います。海抜3,000mから5,000mもの場所で行なうのです。

フォルクローレにはこのとりのことがよく出てきますし、私たちの世代にとっては何と言っても1970年に出た「コンドルは飛んでゆく El Condor Pasa」(サイモンとガーファンクル)での物悲しげなケーナの音ですよね。

スペイン語の歌詞を見てみましょう。

Oh majestuoso Cóndor de los Andes,
llévame, a mi hogar, en los Andes,
Oh Cóndor.
Quiero volver a mi tierra querida y vivir
con mis hermanos Incas, que es lo que más añoro
oh Cóndor.

En el Cusco, en la plaza principal,
espérame
para que a Machu Picchu y Huayna Picchu
vayamos a pasear.

「Yahoo! 知恵袋」には、邦訳が出ています。

ああ雄大なアンデスのコンドル、
連れて行っておくれ、私の家へ、アンデスの、
ああコンドルよ
私の最愛の土地へ戻りたい、
インカの兄弟と共に生きたい、この郷愁よ
ああコンドルよ

クスコの大広場に、
マチュピチュとウアイナピチュを待って、
さあ出掛けよ

Prefiero ser un cóndor que un gorrión
y volar sin soñar y sin canción.
Prefiero ser un árbol que una flor
y crecer sin temer y sin dolor.
Buscar sin encontrar jamás
sin descansar sin fe ni paz.
Partir y nunca regresar y así vivir
y así pasar. Y así pasar.
Prefiero ser el beso que el amor
y olvidar sin llorar y sin rencor.
Prefiero ser la lluvia sobre el mar
y morir sin sufrir y sin cesar.
Buscar sin regresar jamás
sin encontrar sin fe ni paz.
Partir y nunca descansar y así vivir
y así pasar. Y así pasar …

スズメよりコンドルになりたい
夢もなく飛ぶ、歌もなく飛ぶ
花よりは木になりたい、
恐怖や痛みを感じることなく育つ
見つけることなく探しつづける
休息もせず平和も信仰しない
別れて決して戻ることなく生き、過ごす
そして動いていく
愛よりはその口付け(キス)になりたい
忘却せず、恨みも持たず、喪に服すこともない
私は海に降り注ぐ雨になりたい
絶えることなく、苦しむことなく死を迎える
引き返すことなく探し続ける
見つけることも、信仰も平和もなく
決別し、リラックスし豊かに暮らす
そして過ぎ、過ぎていく…

日本語の歌詞はこちらです。

1. 大空に今日もまたはばたく
一羽のコンドルが(アー)
どこからかあらわれて
アンデスのやまあいを
飛んでいます(アー)
※太陽の栄える国 豊かなこの地に
宝をもとめて 白人が攻めてきました(アーアー)

2. 殺された王は灰の中から
コンドルに蘇(よみが)えりました(アー)
空高くコンドルは
国を守るでしょう いつまでも(アー)

飛べ飛べコンドル 飛べよ
果てしない空を
アンデスのやまに
影を落として
裏切られたインカの
笛の音かなし
自由のため死ねと
パチャママの教え(アーアーアー)

この歌詞にもあるように、16世紀、インカ帝国最後の皇帝トゥパク・アマルが死後、コンドルに生まれ変わったという伝説も残っています。皇帝は即位から1年あまり経った1572年4月にはスペイン軍の来襲で捕らえられ、拷問ののち、9月24日にクスコで斬首されました。

しかし、彼をインカの伝説的英雄にしたのは、いよいよ死刑執行人が刀を取り出したとき、先住民の全群衆が悲しみの叫び声を挙げて涙を流しました。すると、トゥパク・アマルは毅然たる態度で右手をさっと挙げて静かに下ろし、群衆を静かにさせたのです。そして、ケチュア語で別れの言葉を述べたと伝えられています。

エクアドルの国旗を見るたびに私は「コンドルは飛んでゆく」を口ずさみ、このトゥパク・アマルの最後が思い出され、スペイン植民地主義の勝手放題を憎んでしまいます。

せめて今度は、もしかしてトゥパク・アマルの生まれ変わりかもしれないコンドルをインカ帝国の二の舞にしないよう、大切に保護したいものです。

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