国旗に世界遺産が登場するのは、カンボジア、レバノン、ジンバブエの3カ国です。
今回はレバノンについて。国旗の真ん中の木は、「レバノンスギ(杉)」です。『聖書』のは「香柏」という訳で何度も出てきます。フェニキア文明の最盛期にはまさに、この木によって船を造り、帆柱を立てたことから始まります。フェニキア人たちはレバノンを拠点にカルタゴに移住し、闘将ハンニバルが一軍を率い、ローマと対抗するほどまでに大いに栄えたのはもちろん、今日の西は今のポルトガルあたりまで、地中海一帯に勢力を拡大していたのです。
それが濫伐にあい、今では貴重な樹木として、手厚く保護されてなんとか種を保ってきたという状況なのです。それも、安田喜憲国際日本文化センター教授(今年4月より東北大学教授)を中心とする日本のプロジェクトチームの20年に及ぶ苦労の山積によるものです。
今回、安田先生から日本語や英文のさまざまな資料や写真集をいただきました。厚く御礼申し上げます。
レバノンの国旗については1943年12月7日の改正憲法第5条で次のようにしっかりと規定されています。すなわち、
レバノンの国旗は、赤白赤の横の帯から成る。緑色で描かれた「レバノン杉」を白い帯の中央に配する。白い帯は上下の赤い帯の計と同じ幅である。杉は国旗の中心にあり、先端は上の赤い帯に、基部は下の赤い帯に接するものとする。杉の横幅は白い帯の横幅の3分の1とする。
実際には1990年10月にレバノンの内戦が終結し、1992年ラフィーク・ハリーリーが首相になり、以後6年間その座にあったころ、それまでの「幹や主要な枝が茶色」に塗られた「レバノン杉」が緑一色のシルエットになったのでした。
私は1990年代の10年間、東京永田町のレバノン大使館と同じ小さなビルにいましたので、何度も、いつ、どんな法令で緑一色にしたのかと、大使や参事官などに何度も伺いましたが、「oneday at the beginning of 90s」と言ったり、「いつの間にかそうなっていた」というだけで、依然、確たる法令などを見たことがありません。憲法の表現に戻ったということでしょうか。