日本の晩秋、きょうはことのほか寒かった。これで秋も終わりかと思うと、もう一度、カナダの国旗のことに触れたくなった。
11月16、17の両日、東日本大震災の被災地・石巻を訪れた。私が理事長を務めている東京コミュニティカレッジの現地訪問ということで、私は井内保育所で4~6歳の子供たちを前に、「じゅげむ(寿限無)」と「やまんば」の紙芝居の上演を担当した。芭蕉と曾良も訪れたという日和山(60.4m)は、「あの日」駆け上がった多くの命を救い、ガレキと復興を見つめてきた。私もこれで3,4回山頂からかつての市街地を眺めたが、確かにガレキは少なくなってはいたし、この日、石巻出身である石ノ森章太郎の「萬画館」が再オープンしたとはいえ、復興はまだ緒についたばかりという印象だった。
大川小学校は全校児童108人中、74人が死亡または行方不明という惨事の真相が未だ不明のままたくさんの花束と線香の香りに満ちていた。前日までに『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(池上正樹ほか。青志社)を読んで、これまでひた隠しにされてきた地震から津波襲来までの「空白の51分」を垣間見る思いがしたが、想定外の出来事にショックを受けたとはいえ、このまま真実が伏せられてしまってはいけないという思いを強くした。
帰りのバスで、ご一緒した上條恭子さんから3冊目のご著書『街でひろったアート ― デジカメ10年』(下田出版)を贈られた。昭和8(1933)年生まれの方で、東京コミュニティカレッジの運営委員でもいらっしゃるが、NPO法人有終いのちの山彦の電話相談員として長年、ボランティア活動にあたって来られたことには深く敬意を表したい。
その写真集から2葉の「秋」をお届けしたい。「お隣さんからの落ち葉とウチのが混じって、こんなにきれいに散っているんですよ」。
以前にもご紹介したが、国旗で紅葉と言えばカナダ。でも、こんな色彩豊かな紅葉は、日本の、そして上條さんの眼と腕でなければそうは味わえないと、貴重な写真集を前に平常心を取り戻し、しばしうっとりした。
「3.11」から1年8ヶ月、2度目の晩秋も尽きようとしている。亡くなられた方々に合掌し、あらためて追悼し、向寒の砌、被災地のみなさまの御健勝を祈らずにはいられない。