復興国債金貨、「ハトとオリーブ」はいかがなものか

復興国債購入者に贈られる第4記念貨幣のデザインが財務省により決定されたと、11月16日、各紙がいっせいに伝えている。

表はオリーブの枝を咥えたハト、裏は東日本大震災の津波でも倒れなかった陸前高田の一本松。公募作品から大阪府の診療放射線技師忠本孝示さん(60)歳のデザインが金貨となったもの。

もとより考案した方を直接知るはずもなく、恨みもない。しかし、率直に言って、復興国債のシンボルとして一本松には異論はないが、ハトはいかがなものかと指摘したい。

このハト、特定の宗教、ご存じの「ノアの方舟(箱舟)」に由来するものだからである。国旗ではフィジーの国旗(国章)に出てくる画像(後述)ではあるが、本来、 『旧約聖書』創世記6章1~4節に登場するユダヤ教、キリスト教、そしてそれを参考にしたイスラムの『コーラン』にも出てくる話だ。

「創世記」に描かれるノアの物語はウィキペディアに拠れば、以下のような内容である。

ノアの父はレメクであった。ヤハウェは地上に増え始めた人々が悪を行っているのを見た。そこで天使アルスヤラルユル(ウリエル)を呼び、大洪水で地上の全てが滅びるが「ヤハウェに従う無垢な人」であったノアとその家族のみは生き延びさせるよう指示するようにいった。アルスヤラルユルはノアに箱舟の建設を命じた。

ノアは500歳で息子セム、ハム、ヤペテ(ヤフェト)をもうけた。ノアがヤハウェに箱舟を作るように命じられたのは恐らくこの頃で、箱舟の建造には数10年から100年の歳月がかかったと考えられる。箱舟はゴフェルの木でつくられ、3階建てで内部に小部屋が多く設けられていた。

ノア(当時600歳)は箱舟を完成させると、自分の妻と息子とその妻たち(計8人)と、すべての動物のつがい(清い動物「家畜」は7つがいずつ)を箱舟に乗せた。大洪水は40日40夜続き、地上に生きていたもの全てを滅ぼしつくした。水は150日の間増え続け、その後箱舟はアララト山の上にとまった。

40日後にノアは烏を放ったが、とまるところがなく帰ってきた。さらに鳩を放したが、同じように戻ってきた。7日後、もう一度鳩を放すと、鳩はオリーブの葉をくわえて船に戻ってきた。さらに7日たって鳩を放すと、鳩はもう戻ってこなかった。 それによりノアは水がひいたことを知り、家族と動物たちと共に箱舟を出た。そこで祭壇を築いて焼き尽くすいけにえを神にささげた。ヤハウェはこれに対して、二度と全ての生物を滅ぼすことはないと誓い、ノアとその息子たちを祝福し、そのしるしとして空に虹をかけた。


フィジーの国旗

フィジーの国章

フィジー政府観光局の資料によれば、同国の総人口は約約80万人(2002年5月現在)。うちフィジー系が47.8%、インド系が47.4%を占め、その他が4.8%。フィジー系はほぼ100%がキリスト教徒ですが、インド系はヒンドゥー教徒、イスラム教徒などに分かれ、 ごく少数ですが中国系の仏教徒などもいます。

これならば、紋章の一角に「ハトとオリーブ」が登場しても、納得できよう。しかし、なぜ、ユダヤ教以下の諸宗教と特段の関わりをもたない日本で、政府の発行するものが「ハトとオリーブ」なのか。

思いだすのは、敗戦直後にPeaceという巻煙草があったこと。濃紺の箱にはなぜか、ピースではなくPeaceと表示され、箱にはこの「ハトとオリーブ」が描かれていた。恐らくは専売公社が占領軍(連合軍)のご機嫌取りに案出したものだったのだろう。

ついでながら、フィジーの国旗にはオリーブのほかに4つの植物が描かれている。すなわち、イングランドの象徴であるライオンの手にはカカオの実、白地に赤の聖ジョージ(イギリスの守護聖人)十字で四分割されたエリアがあり、左上にはサトウキビ、右上にはココヤシ、右下にはバナナ、いずれもフィジーの特産品である。

それはそうと、国旗と樹木のことについては次回、触れてみたい。

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