つまらぬことにいいがかりを付けるというのは、不良少年がよくやること。
長嶋・松井の国民栄誉賞受賞を讃える始球式で、(なぜか巨人軍のユニフォームを着て)主審役に立った安倍首相が96番の背番号を背負っていました。これはどう首相が第96代目の内閣総理大臣であることによるという説明ですが、折から憲法96条の改正という論議があるなかで、いろいろ言われました。
写真は時事通信電子版から。
それが今度は東日本大震災の被災地視察で、安倍晋三首相が試乗した「日の丸」付の航空自衛隊機、その機体番号が「731」だったことから、韓国メディアや国会議員が、細菌兵器の捕虜を使った人体実験などを行ったとされる旧日本軍の731部隊を連想させる「挑発だ」と韓国側が問題視しているというのです(時事通信)。
時事通信のソウル発の記事はさらに続きます。
防衛省幹部は「全くの偶然だ。報道されていると聞いて(初めて)気づいた」と一蹴した。
安倍首相は12日、宮城県東松島市の航空自衛隊松島基地で、曲技飛行チーム「ブルーインパルス」の練習機の操縦席に座った。防衛省幹部によると、首相が乗ったのは隊長機で、機体番号は機種や製造順で決まるという。菅義偉官房長官も15日午前の記者会見で「あえてそんなことをするはずがない」と述べた。
韓国の夕刊紙・文化日報は14日、「731と書かれた練習機に乗った安倍、歴史挑発波紋」と1面トップで報道。「生体実験の名誉回復狙う? 軍国主義の亡霊を呼び覚ますのか」との見出しの別の記事で、731部隊を詳しく説明した。
他の韓国紙も15日に一斉に報じた。中央日報は「731部隊まで動員した安倍の極右妄動」と題した社説で、「支持層の結束を狙った計算された演出ではないのか」といぶかった。
韓国のみなさん、もう少し大人になりましょうよ、と言いたい。日本人のほとんど誰も気づかなかったことをかくも針小棒大、曲解の極みで大騒ぎするというのは、他に意図があるからとさえ思ってしまいます。
お互いに引っ越しできない隣国であり、相互理解、互恵、協力関係の最も進んでいる国と国民ではないですか。
ただ、このように数字は独り歩きするから気を付けたいもの。4月29日、訪露した安倍首相を迎えた午餐会でプーチン大統領は1855年製のワインを出したそうです。ワインの収集・研究者である私の友人は「味は全く保証できないでしょう」というので、ワイン好きの私でも別にうらやましいとは思いません。また、4半世紀ほど前、ジンバブエのさるポルトガル人のお宅で1789年(フランス革命の年!)製のワインを飲んだことがありますが、とても飲めたものではありませんでした。
ただ、「もしかして、ラベルを貼り換えただけじゃないの」などという失礼な別の友人もいるが、たとえ何であれ、この数字のワインを出した、つまり、日魯通好条約(下田条約)締結で、北方4島を日本の領土としている条約の年の数字を示したというだけで、これはなかなかやるな、キメ細かいワザだなというのが私の率直な印象だ。
これがもし、1945(日本の敗戦に付け込んでロシアが日本固有の領土である北方4島まで侵攻した年)とか、1956(日ソ共同宣言が締結され、歯舞・色丹のみ平和条約締結時に引き渡すとした内容)といった数字の書かれたワインでないということは、それなりの好感をもって受け入れられる小技ではないでしょうか。
96の背番号や713号機といった今回の数字は、考えすぎということもできるが、いやしくも一国の総理の周りの人は、言いがかりをつけられる前に、入念な配慮をしてよかったのかもしれません。つまらぬ隙を見せないことの大切さを、不良少年にからまれたことから学んだ私の経験則ないし人生訓です。
李下に冠をたださずというのもありましたよね。