2013年10月28日付朝日新聞は、同社女性ベテラン記者の大久保真紀編集委員らしい、短くも意義ある記事を掲載している。
明治初年以来の日本の移民政策の最大の失敗がこのドミニカ共和国への農業移民だった。これまでもいろんな本でその人たちの苦労は聞いていたが、大久保編集委員の簡潔明瞭なこの記事で、その悲劇が集約されている。
ドミニカ共和国の国章
ドミニカ共和国の国旗は聖書に十字架、オリーブと棕櫚、DIOS, PATRIA LIBERTAD(神、愛国、自由)と何とも平和的な国章を置いたもの。同じ島を2分するハイチの国旗は対照的に、大砲や銃にトランペットと太鼓という勇ましいもの。
そのドミニカ共和国でのご苦労であるだけに、国旗は表面だけをみてはいけないと、この記事でまた諌められた。
カリブ海に浮かぶドミニカ共和国の首都サントドミンゴで27日、日本人移住者らによる物故者慰霊祭があった。移住者のほか、大使館や国際協力機構(JICA)の関係者約50人が、現地で亡くなった移民ら173人の霊前に手を合わせた。
ドミニカには1950年代後半、日本政府の募集に応じて約250家族1300人が移住したものの、募集要項にあった優良農地が配分されず、移住者は苦難の生活を強いられた。多くが帰国あるいはブラジルなどに転住、残った約50家族が約1千人の日系人社会を築いている。物故者には「土地、土地」と叫びながら亡くなった人のほか、自分が死ねば妻子を日本に帰してもらえると自ら命を絶った人も10人以上いるという。
佐藤宗一大使は「自分の思いを実現することなく亡くなった人に哀悼の意を表し、これからの日系社会の発展のために心からお祈りしたい」とあいさつした。