産経新聞 1月8日付電子版は、「米のいらだち、イラクの二の舞い懸念 中東への関与低下」の見出しで、「オバマ米政権は、国際テロ組織アルカーイダ系武装勢力「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)がイラク、シリア、レバノンで勢力を拡大していることに、脅威の認識を強めている」として、オバマ政権が中東でいささか手詰まりになっている状況を伝えている。
1991~2004年、すなわち湾岸戦争で敗北してサダム・フセイン大統領が中央に自らアラビア語で「アッラーは偉大なり」と書いた国旗。
2004年、イラク戦争で敗北してから中央の文字をクーフィー体の活字にしたイラク国旗。
アルカーイダ系の武装勢力「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)が掲げているこの旗はサダム・フセインが定めたイラク国旗に酷似している。
このことからこの政治勢力は、スンニー派イスラム教徒で、サダム・フセインに近い人たちと想像できる。
ワシントンの青木伸行記者の記事はさらに続く。
イラク情勢の深刻化は、米国の中東への関与と影響力の相対的な低下に対する批判を、米国内に呼び覚ましており、今年末までに予定されているアフガニスタンからの米軍戦闘部隊撤退に微妙な影響を与える可能性もある。
ISILがイラク中部ファルージャを制圧した事態などを受け、米政府は6日、空対地ミサイル「ヘルファイア」100基、無人偵察機「スキャンイーグル」10機、「レイブン」48機をイラク政府に供与すると発表した。バイデン副大統領も、イラクのマリキ首相に電話で支援を伝えた。
オバマ政権は「米地上部隊の派遣は検討していない。これはイラクの戦いだ」(ケリー国務長官)という認識でいる。
イラクからの米軍撤退が完了し約2年。政府高官は「撤退は不可逆であり、小規模の部隊を投入しても事態を改善できない」としている。
そもそもイラクとアフガニスタンという、ブッシュ前政権からの「負の遺産」を引き継いだオバマ政権は、両国から“足抜け”する動きと相まって、中東への関与を低下させてきた。
「アラブの春」では、影響力の限界と一貫した中東政策の欠如を強く印象づけた。具体的には(1)反体制勢力に対し、リビアでは早期軍事支援に踏み切り、シリアでは支援をぎりぎりまで避けた(2)エジプトではムバラク大統領(当時)の失墜を食い止める策がなかった(3)民主化要求デモが起きたバーレーンに改革を要求したが、サウジアラビアの反対で阻止された-などだ。
リビアへの空爆をめぐり、主導的役割を担うかどうかで揺れ動いたことは、記憶に新しい。「内向き」の米国は軍事介入を避けつつ、エジプトの暫定政権などに対するように、武器や資金の供与を凍結したり、逆に支援を強めたりすることにより、中東情勢を“操作”しようとしている。
米国という“重し”が軽くなったことは、多国間外交を動かす一方、中東のタガを外した側面がある。こうした延長線上に、イラク情勢の深刻化もあろう。
ジョン・マケイン上院議員(共和党)らからは「米軍の完全撤退が原因であり、アフガニスタンもイラクの二の舞いになりかねない」との声が上がる。関与の低下はオバマ政権に、ジレンマをもたらしている。
ところで、この記事についていた反政府勢力の旗、本稿に挿入したイラク国旗の変遷と説明を参照していただきたい。
アルカーイダ系の武装勢力「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)が掲げているこの旗はサダム・フセインが定めたイラク国旗に酷似している。このことからこの政治勢力は、スンニー派イスラム教徒で、サダム・フセインに近い人たちと推測していいのではないか。
だとすれば、その反米精神はかなり根深いものがあるとみるべきであろう。