少し話を戻します。
日本国憲法第九十八条は、すべての海軍関係の法令を失効させました。このため、六百五十一号は廃止され、日の丸のデザインにかかわる有効な成文の法令は太政官布告第五十七号のみとなりました。百分の一ずらす方です。しかし、現実には、円を百分の一ずらすといったような規定はほとんど無視され、東京、札幌、長野のオリンピックでも、またニューヨークの国連ビルや本院の屋上の日の丸もすべて、円の中心は対角線の交点、すなわち旗の中央に日の丸が置かれてきたのであります。今回の法案で、円を旗面の中心に置くとし、また日の丸のデザインをはっきりさせるため五十七号の失効を織り込んでいるのは、こうした実態にかんがみて、当然のことでありましょう。
一九六二年、昭和三十七年、オリンピックを前に、永井一正、この方は現在日本グラフィックデザイン協会会長という要職にある方でございますが、このほかに白井正治、有本功の三人の若手グラフィックデザイナーが、新しい日の丸を提案し、その法制化を求めました。これが三番目の日の丸であります。すなわち、縦横比二対三、円の直径は縦の三分の二、円をちょっと大きくしています、円は旗面の中心というものであり、これは、いわば六百五十一号型の円の部分を少し大きくしたものでございました。これが三番目です。永井さんらは、これによって古いイメージを払拭した新しい平和のシンボルともなることを期待したいという趣旨を発表して、提案したわけでございました。
東京オリンピックの組織委員会では、その永井さんらの提案の採用を内定いたしまして、プレオリンピックなどで使用しましたが、最終的には、今回の法案と同じ六百五十一号型の日の丸を採用したわけでございます。
他方、昨年の長野のオリンピックでは永井提案が全面的に採用されました。永井さんたちが掲げた提案理由のほかに、冬のオリンピックということでございますから、背景が雪で白でございまして、したがって少し日の丸の赤の面積が多目の方が適切であろうと私どもが考えたからでございます。
ところで、我が国のフラッグキャリアである日本航空と全日空では機体の日の丸のデザインは異なっております。皆様お気づきの方も多かろうとは思いますが、日本航空の機体には、縦横比二対三、縦の十分の七の直径の円、そして永井型よりさらに大きな丸、十分の七でございますね、これが第四のタイプでございます。日本航空型。これは機体のデザイナーとしては、日本航空の機体そのものは白が大部分でございますから、そこは赤い丸をやや大きくした方がいいのではないかと考えたようでございます。
(つづく)