おそらくは明治25年生まれであるオヤジの偏見、いやきっと極端な暴言かとは思うが、秋田に帰省するとき、「山本山」の海苔を買っていったことがある。
山本海苔店
山本山海苔店
山形屋海苔店
高島屋日本橋店
三越本店
三越銀座店
「忠正、わしは戦前から何度も上京している。関東大震災の時など大きな取引を終え、ちょうど天丼を食べようとしている時、ガラガラと屋根瓦が落ちてきた」(この話は生涯、何十回聞かされたことか)。「そのワシがいうことだからよく聞け。この海苔は確かに美味い。しかし、世間では山本海苔店を最高と見ている」(真偽不明)。「今回は家族だからよしとしよう。しかし、他人様に贈るときは、何であっても最高の店で購入することだ」。「百貨店(デパートとは決して言わなかった)なら三越かせいぜい高島屋まで。東横、小田急、京王などはもってのほか」。
45年ほど前にオヤジが亡くなってから、その“遺言”「昼酒は飲むな」は健気に守っているが、「東京の女には気を付けろ」はほとんど壊滅。頭が上がったことのない女房ドノは目黒の出身(GF!もほとんど東京出身)。せめて「贈り物は一流店で」を護りたいがふところと地理的条件、時間的制約に負けている。それより「いいものはいい」で、今や海苔で言えば「米忠」(池上本門寺前)が“お江戸で一番“と確信するに至っている。
閑話休題。GWに、日本橋を歩いたところ、久々にその山本海苔店、山本山海苔店、そして山形屋海苔店の前を通った。いずれも一流で著名な海苔屋さん。ところが、日頃、欧米では一流の企業は「日の丸」を掲げると、講演などでしゃべっている私なので、ふと眺めてみると・・・オヤジの言うことを思い出した。山本海苔店だけが「日の丸」を掲げ、他の2つはそうではなかった。
そして、三越(本店、銀座店)と高島屋はそろって「日の丸」を掲げていた。
どうやらオヤジの“偏見”は確実に私に引き継がれ、もしかして子々孫々にも…。欧米では一流企業は国旗を掲げている。