シリアの現国旗。
反政府勢力が掲げる前国旗
シリア情勢がいよいよ難しくなってきました。国連人権理事会の調査委員会は、2月23日、昨年3月の反政府デモ発生から2月15日までのシリア内乱による死者が8,079人に達したと発表しました。
そうした中で、翌24日、チュニジアの首都チュニスに日本や欧米とアラブ諸国など60カ国の代表が集まり、「シリアの友人」会合が開催されました。シリアの反政府各派の連携は必ずしも十分ではなかったのですが、この会合では「シリア国民評議会(SNC)」を「平和的な民主化変革を求めるシリア人の正当な組織」と認める議長総括を出して終えました。アラブ諸国、とりわけサウジアラビアやアラブ首長国連邦など湾岸諸国が強く求めた軍事支援は欧米の足並みがそろわず、決定には至りませんでしたが、これによって各国が反体制派を支援する土台ができたことになります。
議長報告はほかに、暴力の停止や人道支援の受け入れなどをアサド政権に求めましたが、残念ながら、政権側がこれをすんなり受け入れる可能性は低いと言わざるを得ません。しかし、現実には反体制を制する武力鎮圧作戦は厳しく継続されており、日々、少なくとも数十人の死者が出ているのですから、近い将来、支援する諸外国とのさらなる連携の強化を図るべく、協議が重ねられる見通しです。
加えて、シリア軍はロシア製の武器を中心に高度な武力体制を整えていること、ロシアや中国が後ろ盾になって国連安保理が2度も決議案を否決するなど機能しないこと、また、アルカイダとの連携もできているらしいといった情報もあり、このままでは反政府側も本格的に武装を整え、内戦状態が泥沼に発展し、ただただ人命が失われていくという最悪の状態に至ることもなしとしません。
国連とアラブ連盟は2月16日の総会決議に基づき、コフィ・アナン前事務総長をシリア情勢打開のためのシリア特使に任命しました。同氏はこれまでの数々の経験・実績・人脈による紛争仲介成功への期待を集めています。
武力による内戦を避け政治決着を図ろう、国際社会は包囲網をさらに強化しようとしています。自国民への虐殺を繰り返すアサド政権の一日も早い崩壊を望み、旧国旗がシリア全土に翻る日の来ることを切望します。