英国が分裂?

英国が分裂!?

まさかと思いがちですが、それを現実の政治課題として動いている人たちが、最近勢いを増してきているのです。

スコットランドと言えば、左党はスコッチ・ウィスキーを、映画ファンなら初代のジェイムズ・ボンド役で一躍世界的に有名になったショーン・コネリーを、「酒を飲まない経済通」ならウィスキーが40億ユーロ稼ぐ話よりも、北海油田に関心が向くのかもしれません。なんといってもヨーロッパ随一の石油埋蔵量なのですから。政治に詳しい人は、そうそうトニー・ブレア前首相がスコットランドの出身でしたね。

スコットランドは17世紀の初めにイングランドと同君連合を構成しましたが、1707年の合同法(Acts of Union)によって、グレイトブリテン王国が作られるまでは独立したスコットランド王国でした。むしろ長い間、血で争う隣国だったというほうが正しいかもしれません。

現在の人口は500万人強、首都のエディンバラは工業都市グラスゴーに次ぎ、人口ではスコットランド第二の都市。しかし、ロンドンやドイツのフランクフルトなどとともにヨーロッパ最大の金融センターの一つとなっています。

そのスコットランドの一部(といってもかなりの数)に、独立を支持する人たちがおり、独立を主張するスコットランド民族党(SNP)がスコットランド議会の過半数を握るなど、結構、勢いを増しているのです。

英国国家「God, save the Queen」ではなく、事実上のスコットランドの「国歌」である「スコットランドの花(The Flower of Scotland)」が盛んに歌われるようになった

と、昨日の「フランス2」のテレビ映像でも報じられていました。

それに対し、ロンドンでは「独立、早く問え」とスコットランド議会に要求しているのです。それは世論調査を見ても、今なら否決できるからというのですから、あまり楽観できる話ではないのです。

加えて、再来年2014年はスコットランド軍がイングランド軍を破った1314年の「バノックバーンの戦い」から700周年。スコットランド人の血は騒ぐと読むスコットランド自治政府のアレックス・サーモンド首席大臣(首相に相当。SNP党首)には、投票時期を遅らせることで、賛成派を増やす思惑があるようです。昨年5月のスコットランド議会選(定数129)で、SNPは、独立の是非を巡る住民投票の実施を公約して選挙戦を戦い、初めて過半数を獲得したのです。

すなわち、去る1月11日の朝日新聞によれば、

英国を構成する4地域の一つスコットランドの独立の是非をめぐり、英政府は2012年1月10日、独立を問う住民投票を行う権限をスコットランド議会に与える方針を発表し、早期実施を求めた。独立を求める声は根強いが、昨年末の世論調査では過半数に届いておらず、英政府は早期の投票によって「英国解体」の芽をつぶすことが可能とみている。

キャメロン首相は「なぜ14年まで待つのか」と指摘しており、1年半以内に投票を実施させたい考えだ。サモンド氏は「経済的自立」を投票の選択肢に加えることも検討しているとされる。独立に抵抗感を持つ市民を取り込む狙いだが、英政府は、独立の賛否だけを問わなければならないとの条件をつけた。

サーモンド首席大臣は1月25日、自治議会で2014年秋に対英独立の是非を問う住民投票の実施を目指す行程表を発表しました。

SNPが地方議会で単独過半数を持っているとはいえ、英国解体を意味するスコットランドの独立には、保守、自由民主、労働の中央政界主要3党が一致して反対。スコットランド地域内住民のうち、独立賛成を支持する勢力は3~4割と見られています。しかし、住民の大半は自治権の大幅拡大を求めているのですから、話は複雑です。

ただ、この投票の実施には、英国議会の承認となっており、これがすんなりSNPの思惑通りに進むとは限りません。

読売新聞(1月26日付)によれば、

サーモンド党首は、住民投票を、独立自体の是非と、徴税権を柱とする国からの大幅な権限移譲を問う2本立てにする戦術を示唆。キャメロン首相は、独立阻止に向け、「投票実施には英議会の承認が必要」などと語って自治政府に圧力をかけている。

というのです。

今後も両者のさや当てが続きそうです。

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