イギリスとスペインの領土紛争① – スペイン国王が英女王の午餐会に欠席


ジブラルタルの旗

ジブラルタル…「戦略的要衝」「地理的重要性」などというと、地中海の西端を扼するこの地がすぐ思い浮かびます。300年前に失ったその地をイギリスから取り戻そうとするスペインですが、住民の多くは、そのままイギリスの海外領土でいたいというので、この領土問題はなかなか解決に至っていません。


英国女王エリザベス2世

イギリス国旗(ユニオン・ジャック)

思わぬところで波紋が起きました。天皇・皇后両陛下もご出席され、去る5月18日、ロンドン近郊のウィンザー城で開かれた「エリザベス女王即位60周年記念午餐会」にスペイン国王フアン・カルロス1世(1938~。在位1975~)は欠席されたのでした。


スペインの国王フアン・カルロス1世

スペイン国旗(血と金の旗)。
王政復古(1975年)に際し、それまでのワシの紋章を、この「ヘラクレスの柱」と王冠、そして主要な構成地域の紋章からなる国章に変えたものです。

ジブラルタルはわずか6.5平方キロの面積という小さな土地。わが北方領土に比べれば80分の1程度、日比谷公園の3倍くらいの土地です。ジブラルタルという地名は、海峡を渡ってイベリア半島を征服したウマイヤ朝の将軍ターリク・イブン・ズィヤードにちなんだ地名で、アラビア語では「ターリクの山」という意味を持つジャバル・ターリク(Jabal Ţāriq)に由来するのだそうです。


天皇旗。
午餐会への出席に当たり、両陛下はこの旗を掲げたご料車に乗られました。
ご紋章の直径は縦の3分の2、菊の芯の直径は縦の19分の2。

スペイン王位継承戦争を決着させた1713年のユトレヒト条約の締結により、イギリス領となり、爾来、英国の「海外領土」(事実上の植民地)となっています。3万弱の人口ですが、英語とスペイン語がメインですが、このほか、対岸のモロッコなどからアラビア人の商人や労働者が渡来し、居住しているためアラビア語が、また、 かつてスペインがユダヤ人を追放したためこの地に移住してユダヤ人コミュニティができていることにより、ヘブライ語も使われています。

ジブラルタルの土地はほとんどが石灰岩で占められており、農耕には向かないのですが、なんと言っても、地中海の西の首根っことしての戦略的な意義特段に大きいのです。海の向こう、アフリカ側には、スペイン領のセウタやメリリャがあり、その鋭利な山と対に成った形で、「ヘラクレスの柱」と呼ばれる特徴的な岩山があります。

スペインの国旗の中の紋章(国章)にはその「ヘラクレスの柱」が描かれているのです。

「ヘラクレスの柱」については、次回、書きましょう。

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