東京オリンピックの時の正月、読売新聞「30億の兄弟たち」は前日に続き4日付でも本田靖春記者の記事が続きました。今度は、組織委として製作に一番困った国旗が「日の丸」だったことを記事にしています。「円の大きさマチマチ」「白地に赤くというけれど」「早くきめたい正しい日の丸」が見出しです。
実は当時、この旗をどう製作するかで困惑したのです。NHKもテレビ放映の最後には国旗の映像を映し、国歌「君が代」を流していたのですが、翻った旗の映像ですので、細かい寸法は断言できなかったのです。また、「日の丸」は何度か記念切手にもなりましたが、この場合でも、翻った状態の画像になっていました。
吹浦君との対話。
「トルシャル・オーマン、マスカット・オーマンあたりまで調べあげて、国旗については自信があるんですがね」
─ それはどこの国です?
「ペルシャ湾沿岸の士候国ですよ」
─ それじゃ、IOC加盟111か国、国旗に関するかぎりOKというわけですね。
「それが1か国だけわからないのがあって─」
─ どこです。そんな国は?
「日本です。日本」
1964年の東京オリンピックで基本的に使用した「日の丸」。縦横比2:3、円の直径は縦の5分の3、円の中心は旗面の中心に一致。これは1870年の「海軍規則」や、1931年の「大日本帝国国旗法」(案)に則ったもので、1999年の「国旗国歌法」の規定と同じです。─ 日本は日の丸ときまっているでしょう。
「それではうかがいますが、日の丸ってどんな旗ですか?」
─ 歌にあるじゃないですか。“白地にあかく日の丸染めて”。
「ではもう一つおききしましょう。“あかく”というのはどんな色でしょうか?」
─ “あか”は“あか”でしょうが。
「とんでもない。ひと口に青色といったって45種類からの青があるんですよ。“あか”といっても赤、紅、ひ(緋)、朱とさまざまでしょう」
当時有効であった唯一の国旗に関する法令である明治3年1月27日付の「太政官布告」第57号に拠る「商船ニ掲グベキ御國旗」。縦横比7:10、円の直径は縦の5分の3、円の中心は旗面尾中心より旗竿側にヨコの100分の1ずれた「日の丸」。─ では、どの“あか”なんです?
「それがわかれば教えていただきたいんです。ひと口に朝日の色といったって、実際にあらわしようがない」