カンボジアが誇る世界文化遺産アンコールワット遺跡は、廃墟と化して長年密林の中に埋もれていたこと、このため、樹木が根を張り、さしも立派な石造りの寺院を破壊したこと、あいつぐ戦禍で傷んだこと、盗掘や盗難に遭い削り取られたことなどから往時に比べ、痛々しいほどの姿になっていました。
1991年10月の「パリ和平協定」で内戦は一応終止符が打たれ、日本が早速、この人類の遺産を修復すべく、手を差し伸べました。ユネスコ(国連教育科学文化機関)、元宗主国フランス、さらには修復技術を持っているインドなどがカンボジア人に協力して取り組んで気ました。
日本からは、①「日本国政府アンコール遺跡救済チーム(JSA)」と②「アンコール文化遺産保護共同研究プロジェクト」、そして上智大学を中心とする③「アンコール遺跡国際調査団」が熱心に取り組みを続けています。
①は1995年以来、4年の歳月をかけ、アンコールトムの中心寺院バイヨンの北経蔵を担当、石組を解体して修復、再び組み上げました。②は総合的な研究を進め、③はアンコールワットの正面入り口にある西参道を修復、伽藍の精巧な石組みに手を付けるため、日本の優れた石工技術者が参加し、カンボジア人約60人に技術指導を行い、ともにラテライトの石を削り、参道を修復していったのです。
私も作業現場を見せてもらったことがありますが、いずれも灼熱の土地での難行苦行、これぞ世界遺産のありかたの代表のような国際協力だと思います。みなさまのご尽力に敬意と拍手を送り、この世界遺産を立派に後世に遺す意義を讃えたいと思います。