両陛下、天皇賞をご観戦 – 優勝したイタリア人騎手が膝をつき敬礼

文久2(1862)年に横浜で洋式の競馬が開催されてから今年が150年の節目を迎えるということで、 28日、東京競馬場(東京都府中市)で行われた「秋の天皇賞」レースをに天皇、皇后両陛下が観戦された。両陛下で競馬に足を運ばれたのは2005年秋の天皇賞以来、7年ぶり2回目だそうだ。


東京競馬場で秋の天皇賞を観戦された天皇、皇后両陛下

両陛下はこの日、同競馬場で行われた福島県相馬地方の伝統行事「相馬野馬追」や、岩手県の「チャグチャグ馬ッコ」など、馬を使った伝統芸能もご覧になった。

レースは5番人気のエイシンフラッシュが制し、デムーロ騎手が馬から下り、片ひざをついて両陛下に一礼。双眼鏡を覗きながら観戦していた両陛下は、立ち上がって拍手を送られた。


秋の天皇賞で優勝したエイシンフラッシュと、片膝をついて両陛下に頭を下げるM・デムーロ騎手

これについて、10月31日の [産経抄]の次の記事が が素晴らしい。

清々(すがすが)しい思いでその場面を見た。28日、東京競馬場で行われた秋の天皇賞の後のことだ。エイシンフラッシュ号でレースを制したミルコ・デムーロ騎手が正面スタンド前で馬を下りた。芝に片ひざをつき、貴賓室の天皇、皇后両陛下に深々と頭を下げたのだ。

▼デムーロ騎手はイタリア人である。日本でも大活躍していることは競馬ファンなら誰でも知っている。極めて真面目な親日家なのだそうだ。それにしても、勝利の興奮の中でも両陛下への礼節を忘れないその所作に、こちらが頭を下げたくなった。

▼それで思い出したのは、9月に開かれたあるパーティーの席だ。乾杯役をつとめたのは、英国人ジャーナリスト、ヘンリー・ストークス氏だった。英語で日英の近代史などについて語った後、日本語でこう「音頭」をとった。「天皇陛下バンザイ!」。

▼ストークス氏は長くタイムズ紙東京支局長などをつとめた。三島由紀夫と最も親しかった外国特派員としても知られる。日本文化に造詣が深いジャーナリストの思いがけぬ「音頭」だった。会場がいっぺんになごやかな空気に包まれたことは言うまでもない。

▼デムーロ騎手にしてもストークス氏にしても自然な形で、両陛下に敬愛の念を示した。それぞれの母国の精神風土がもつ懐の深さだろう。大統領が天皇陛下に謝罪を求めたり、日本文化を理解せず靖国神社参拝を非難したりする。そんな近隣諸国とは雲泥の差がある。

▼もっとも逆の立場で、日本人が他国の国王や女王に礼を失せずにすませるのか気になる。教育現場では相変わらず国旗、国歌を無視する教師があとを絶たない。しかも一部のマスコミがこれをあおるようなら、いささか心もとない。

後半部分、日本社会が大人になっているかの試金石ともいえよう。

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