王政が打倒されたネパール、臨時の国旗として採択時に1年後の再検討を議会で決議したイラク、英国の自治領という地位を離れることを公約にしている労働党が政権を担っているオーストラリア、一昨年11月に軍事政権が国旗を変更し、政治の舵を大きく切り替えたミャンマー、国旗を改定した大統領が「アラブの春」で追放されたまま、それまでの意匠の国旗を依然使用しているエジプト、内戦で数万人もの死者を出してなお政権の行方について見通しの立たないシリア…、もしかしたら国旗が変わるかもしれないという国はいろいろある。
国旗はその国の国体や政治の変化に敏感なものであることは、世界の国旗の歴史や現実が如実に示している。
その意味で日本の国旗「日の丸」は稀な歴史を持っている。明治維新でも、先の敗戦でも日本は国旗を変えなかった。明治新政府は「日の丸」を掲げて抵抗する函館の旧幕府軍の残党に、「旭日旗」などを掲げて攻撃し、陥落後1年も経たないうち(明治3年1月)に、当時の国旗の主たる掲揚の場である商船に掲げる「御国旗」として、太政官布告を以って「日の丸」を制定した。今次大戦にあっては、あれだけの敗戦と憲法の大改定に拘らず、国旗を変更しようという声は皆無であったと言えよう。
他方、近代史はフランス革命でブルボンの白旗が三色旗に変わり、ナポレオンが欧州大陸のほとんどにこれを示した。その後、ルイ18世の復帰でまた白旗に戻り、1830年の「七月革命」で王位に就いたオルレアン朝のルイ・フィリップにより再び三色旗に戻ったフランスの例を示し、現代史はドイツが第2帝政、第1共和政、ナチスの時代でそれぞれ別の国旗を掲揚し、第2次世界大戦での敗戦で西ドイツはナチスがハーケンクロイツを国旗に採択する以前の黒赤金の横三色旗に戻った史実を示している。
さらに、記憶の新しいところでは、ソ連の解体で鎚と鎌との赤旗が消え、15の共和国がそれぞれすべて国旗を変えた。
そしてまた、英国でさえイングランド、スコットランド、アイルランドの旗を合体してできた「ユニオン・ジャック(ユニオン・フラッグ)」にはウェールズが反映されていないと言っては国旗の変更が話題になり、その一方で、スコットランドでは独立しようというレファレンダムまで行われようとしており、もしも、分離独立派が過半数を征するような事態になれば、世界で最も有名な国旗の1つである「ユニオン・ジャック」もまた潰え去ることになるかもしれない。
2003年、アンゴラで実に愉快な国旗が提案された。未だ正式に採択されたものではないが、マンガチックというか、なんとも楽しいデザインであり、これがもし、同国の国旗になるとすれば、これまでの国旗のしかつめらしい?印象は一変しかねない。
今のところ、独立以来の鉈と歯車と星を配したデザインに変更はないが、私の心のどこかには、この新提案への変更を期待するものがある。
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