将棋の米長邦雄さん逝く – 園遊会での陛下との国旗国歌についての対話

永世棋聖である日本将棋連盟の米長邦雄会長が18日午前7時18分、前立腺がんのため亡くなった。享年69。まずは心からご冥福を祈りたい。

この人の「爽やか流」ともいわれる棋風と積極的な発言や行動には敬意を表してきただけに、早世が惜しまれる。

平成16(2004)年10月28日、赤坂御用地で開かれた秋の園遊会で米長さんが陛下とお話しされ内容が話題になったことは、記憶に新しい。本人が書きのこしたものによれば、こんな感じだったようだ。米長さんは東京都の教育委員でもあった。

10月28日は園遊会。雲ひとつない久し振りの日本晴でした。父親の形見の紋付で出掛けました。全く思いもよらず、天皇皇后両陛下からお声をかけていただきました。さすがに緊張します。将

棋のことをお話ししました。

「現役はやめました。将棋盤を挟んで親子が楽しんでいる家族は幸せだと思います。将棋の普及に努めております。陛下の、お正月に昭和天皇と皇太子殿下とご一緒のお写真は我が家の大切な宝でございます」

「あの、もう随分前のことになります。(都の)教育委員として本当にご苦労さまです」

「はい。一生懸命頑張っております」。

しばらくして隣の妻にもお声をかけて下さいました。

「ご苦労は大変なものでしょうね」

妻はその後は全くなにも覚えてはいない由です。

皇后陛下からは日本の文化、特に音楽についてのお話をさせていただきました。また、養護学校についても心豊かな子どもの教育が大事と教えられました。

皇太子殿下には、昭和天皇と指された頃の思い出話を致しました。

三笠宮寛仁親王殿下は「昨夜の人間講座見ました。頭の中の中古車の話が良かった」と誉めて下さいました。

開かれた皇室、明るい皇室、心温まる皇室。幸せな一日でした。

約100名くらいの知己が出来た感じでした。記念写真などを撮った人が約100名です。

報道によると、このほか、「日本中の学校で国旗掲揚・国歌斉唱が行われるようにするのが私の仕事」と挨拶した米長元名人に対し、陛下は「(教育現場において、国旗・国歌は)強制になるというようなことでないほうが望ましい」と発言されたもよう。

陛下のこのご発言について、宮内庁の羽毛田信吾次長は園遊会後、ご発言の趣旨を確認したとしたうえで「陛下の趣旨は、自発的に掲げる、あるいは歌うということが好ましいと言われたのだと思います」と説明。さらに「国旗・国歌法制定時の『強制しようとするものではない』との首相答弁に沿っており、政策や政治に踏み込んだものではない」と述べた。

また、小泉首相(当時)は29日、「ごく自然に受け止められたらいいんじゃないですか。私もそう思いますね。あまり政治的に取り上げない方がいいんじゃないですか」と発言した。さらに、民主党の岡田克他代表(当時)も、「陛下も人間ですし、当然いろんなお考えをお持ちですから、何も言えないというのはおかしいと思う。一般論として申し上げるが、自由に自分の考えが伝えられるような方向に持っていくべきじゃないか」と語ったという。

天皇陛下と米長元名人の実際のやりとりは、上の引用で「しばらくして」の部分であるが、テレビ放映で聞き取れる範囲のものを起こすと以下のとおりであったとされる。

「日本中の学校にですね、国旗を挙げて、国歌を斉唱させるというのが、私の仕事でございます」

「ああ、そうですか」

「今、がんばっております」

「やはり、あの、あれですね、その、強制になるというようなことでないほうがね、望ましいと…。

「ああ、もう、勿論そうで…本当に、素晴らしいお言葉を頂きまして、ありがとうございました」

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陛下の御発言は、国旗・国歌法審議時の小渕首相(当時)の答弁と変わるところがなく、政府の見解のままであるといえよう。

また、陛下のこのご発言について、朝日新聞は30日の「国旗・国歌――園遊会での発言に思う」と題する社説で次のように述べている。まず、このご発言について「憲法の趣旨に反することはない」とする政府の見解は「妥当な判断だと思う」とし、「今回の場合、波紋の原因はむしろ、米長さんが国旗・国歌のことを持ち出したところにあるのではないか」「国旗・国歌のように鋭い対立をはらんでいる問題は、天皇の主催行事である園遊会の場にふさわしくない」「米長さんの発言に対して天皇陛下があいまいな応答をすれば、そのこと自体が政治的に利用されかねない。陛下が政府見解を述べたことは、結果としてそれを防いだとも言えよう。米長さんの発言は『教育委員のお仕事、ご苦労さまです』という陛下からのお言葉に答えて飛び出した。国旗・国歌問題を意図的に持ち出したかどうかはわからない。もし意図的でなかったとしても、軽率だったと言わざるを得ない」といういささかまわりくどい表現で、米長さんの態度を批判している。

国旗・国歌については私もまた権力による強制はよくないと思う。ただ、それと同様に、国旗国歌法に拘らず、国旗国歌というものにふさわしい取り扱いが世界の常識として確立されている事実をも尊重すべきものだ。

私は光栄にも両陛下とこれまでに何度もお目にかかる機会をいただいたが、何を話したかは口外しないできた。それが「健全なる常識人」という私が目指すあり方だと思うからだ。

米長さんもそのあたりはもう少し「爽やか流」であったほうがよかったのではないか。

再合掌

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