メイド・イン・イギリスではあるが

本格的な冬を前に、先日、家族ぐるみのお付き合いをしているWご夫妻から、特別暖かく、長さが2メートルもある毛糸のマフラーをいただき、すっかり愛用している。おかげで「懐の寒さは変わらない」が、襟元は断然暖かい。今も室内でそれを首に巻いてPCに向かっている。

そのマフラーに付いているのがこのラベル。「MADE IN UNITED KINGDOM」(英国製)と材質を示す小さなラベルでの表示はあるが、それを覆い隠すように「SCOTLAND」と「SCOTISH TRADITION」の文字が見える。

私たちがイギリスとか英国(近世の日本では「ぶりたにあ」「あんぐりあ」と呼ばれ,手元にある幕末の国旗の書物では、「貌利太尼亜」「諳厄利亜」などの漢字が充てられている。中国では「英吉利」)と呼んでいるこの国、本来なら「連合王国」と略称されていい。正式には「UNITED KINGDOM OF GREAT BRITAIN AND AND NORTHERN IRELAND」(グレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国)というのだから。

イギリスという国名表示は、日本独自のものだが、おそらくはポルトガル語のINGLEまたはオランダ語のEngelschからきているのではないかと思われる。BRITAINは先住民ブリトン人の「騒々しい人々」に由来する。

ブリテン島の先住民はケルト人。しかし、カエサルの率いるローマ帝国の信仰を経て、5世紀からゲルマン系のアングロ・サクソン人やノルマン人が波状的に侵入し、この島に定住した。このため、英語にはさまざまな国の言葉が混入し、世界一普及していることばでありながら、文法や発音がフランス語やドイツ語のように画一的に整備されておらず、今日なお極東の受験生たちを悩ませている。Monday、Laundry、Laugh、National、Rationの冒頭の発音の異同など、他の欧米語では考えられない難しさであると言えよう。

英国人の自称はAnglish、そこからEnglishやEnglandの言葉ができた。Angloとは英国人の先祖がデンマークに近い、ドイツ北部のシュレスヴィッヒ地方のアングル、すなわち「(土地の)隅 angle」から来たことに拠る。

ところでその英国旗、「UNION JACK」または「UNION FLAG」の愛称で、かつては文字通り、世界中で翻っていた。「太陽の沈むことなき帝国」と自他ともに称していたヴィクトリア王朝時代がその砕石だった。

国旗は、まず1606年4月12日、イングランドとスコットランド同君連合が成り、両国旗が合体して国旗も合体し、最初の「UNION JACK」となり、1801年1月1日、それにアイルランドが加わって、「グレートブリテンおよびアイルランド連合王国」が成立した時、現在の国旗になった。

いただいたマフラー、「MADE IN UNITED KINGDOM」だけではなく、「SCOTLAND」と書いてあるところに、私はこの「連合王国」の難しさを思い浮かべるのである。来年以降のこの国の政治課題の1つにスコットランドの独立を問う住民投票の実施がある。

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