まずもって、人質となり、亡くなられた方々に謹んで哀悼の意を表します。合掌。
小欄ではかねてからマリ情勢について何度か触れてきましたが、これで情勢はいよいよ複雑になってきました。テロリストたちはマリからのフランス軍の撤退を要求していました。しかし、マリ国内では年初に軍事介入した旧宗主国フランスの軍は増強が図られ、あらたにAU(アフリカ連合)の合同陸軍部隊の派遣も急がれています。
他方、イスラム過激派は今回のアルジェリア軍の事実上一切の交渉を拒否した強行突入に対抗し、アルジェリア国内、アルジェリアの在外公館、航空機、フランスを始めその他の国々に対して、新たなテロ活動を実施する可能性は低くないと思います。武力抗争の連鎖をどう食い止めるか、情報の共有化など関係諸国の協力が望まれます。
今回のような人質事件やハイジャック事件に対し、イスラエルはほとんど常に強行突入策を採るのが普通です。数々の被害に遭ったイスラエルとしては、自国民に死傷者が出ようと、こうした事件ではいいなりにならないということを示して、全体としての生き残りとテロの抑止に成果を上げてきたのです。
アリジェリアの現政権も以前の事件で同様のやり方で国民の支持を得てきたし、練度の高いテロ対策の国とされる米英日などが「人命第一」「早まるな」とプレッシャーを加えても、そうした要請や要求に屈したり妥協たりしては、国内政治が持たないということもあるでしょう。また、国歌を支えるこれだけの大きな産業施設が破壊されることへの懸念もはたらいたのではないでしょうか。
残念ながら、今回は特に情報が輻輳し、依然、何がどうなったかはさっぱりわかりません。外務省やメディアの力量が試されているのです。
それにしても、こういう場合、日本の航空機が救援機としてせめてアルジェ空港くらいまでは出せないものでしょうか。日揮の社員だけであろうとなかろうと、多国籍の人をも含めて、まずパリまで、次いで最終的に成田か羽田空港まで人質だった人たちを慰労し、乗せてあげていいのではないでしょうか。政府専用機はこういう場合に使ってもいいように思います。 (この記事は、アルジェリア軍が強行突入し、日本人数名が亡くなったという報道のあった直後に記載したものです。その後の展開は皆様ご存じのとおりです。)