米国の銃規制強化を同盟国として忠告せよ


ケニア(左)とスワジランドの国旗。小型武器もこの辺りまでは文化財として受容できるのだが…

スワジランドの国旗

米東部コネティカット州ニュータウンのサンディーフック小学校で12月14日朝(日本時間14日深夜)、20歳の男が銃を乱射し、児童20人を含む計26人が死亡した悲劇が起こった。容疑者アダム・ランザ(20)はこの学校の教師でもある自分の母親も自宅で殺害し、
乱射の現場で自殺した。

容疑者は軍用ライフル1丁と短銃2丁を所持しており、銃の登録は母親の名義だったとか。21世紀最先端の文明社会といわれるアメリカでのこの事件は、この国の社会の病気のようなものさえ感じさせられる。

さすがに、幼い子ども多数が銃の犠牲になるという米史上でも例のない事件に、オバマ米大統領も「意味のある行動を」と銃規制に取り組む必要を訴えた。

しかし、銃器メーカーなどから巨額な資金を得、共和、民主両党の議員に積極的に献金し、米政界に大きな影響力を振るっているNRA(全米ライフル協会)は、銃愛好者らでつくる米国有数の圧力団体。バージニア州に本部を置き、趣味としての銃の「適度な」規制による普及を進める。南北戦争後の1871年に射撃訓練をする団体として創設。1960年代以降に「市民が銃で武装する権利」を守るロビー活動を活発化させた。

オバマ米大統領は16日、銃購入者の身元調査の強化や殺傷力の高い銃の製造・販売禁止などを柱とする規制強化策を発表。政権2期目の最優先課題に位置づけた。だが、強い政治力を持つ全米ライフル協会(NRA)は強く反発し、議会の反対勢力の説得は困難だ。安全を銃に頼る国民意識も根強い。そこまで銃所持にこだわる理由は何なのか。

NRAはこれまでも、「銃規制は自由に対する侵害」と主張し、規制を強めるオバマ政権に対する危機感をあおってきた。ラピエールNRA副会長は600ページ以上に及ぶ「武装解除された米国」という著作で、「オバマ政権が国連と一緒になって、米国民の銃所持権を骨抜きにしようとしている」と詳しく論じている。

思い出すのは、クリントン政権時代のモンデール駐日米大使の発言。「銃規制は内政だけの問題ではない」と述べた。これに対し、ラピエールNRA副会長は「日本の好意を得るため、米国民の権利を犠牲にした」と批判した。

日本が国連など小型武器の規制を進めようとしているのは大いに意義あることであるが、これについてもどう副会長は、厳しく糾弾している。

NRAも以前は銃規制に総論としては賛成だったが、1977年に起きた主導権争いの結果、所持権ばかりを強調し、あらゆる銃規制に反対する団体になったとされる。

アメリカという国は確かにすばらしい国ではあるが、かなり緩和されたとはいえ依然残る人種差別、栄養摂取過多による健康破とともに、環境、人権、安全保障など広範な分野での独善主義は深刻だ。

日本は真の同盟国として、また、「刀狩り」以来、完璧というべき銃規制を達成してきた国として、政府もメディアも、銃社会アメリカへさらに圧力ならぬ助言を強めていいのではないか。

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