国旗掲揚のマナーと留意点③


2月22日、ニューヨークハツノロイター電は、格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは同日、英国債の格付けを「Aaa」から「Aa1」に1段階引き下げ、中期的な成長見通しの弱さなどが理由とし、成長低迷は数年続くとの見方を示した、と報じ、傷んだ英国旗(「ユニオン・ジャック」)を表示した。ニュース報道として目を引く手法ではあろうが、あまり感心した国旗の用い方ではない。

国旗の掲揚法について具多的にお示ししましょう。

  1. 国旗は国家と国民の尊厳の象徴であり、常に丁重に取り扱わなければいけません。国によっては汚したり、損壊したりした場合、厳しい罰則を設けていることがあります。わが国でも刑法に規定がありますが、外国旗についてのみの規定になっています。
  2. 国旗を旗竿に掲げる場合は、常に旗竿の最上部(竿頭)にピタッと接した形で掲げなければなりません。
  3. 国旗を逆さまに掲揚することは厳禁です。1958年のアジア競技大会の表彰式で中国(中華民国)の国旗「青天白日満地紅旗」を日本の組織委は逆さまに揚げてしまいました。その失敗に懲りて6年後の東京オリンピックに際し、その2年前から私が競技部式典課専門職員として採用されました。1枚1枚の国旗を入念に点検し、旗布とロープの留め金を工夫して万全を期して、役割を果たすことができました。
  4. 旗布は地面に接してはいけません。引きずったり踏みつけたりは論外です。
  5. 複数の国の国旗を同時に掲げる場合には、大きさは同一で、旗竿の高さも同一としなければなりません。国連やオリンピック競技大会では通常、すべての国旗を2:3の縦横比で統一しています。複数の国旗を用いる場合は、日本では「日の丸」の2:3という縦横比に、他の国の国旗を統一したものを掲げることを原則とします。
  6. さまざまな理由により、各国旗はしばしば変更されることがあるということを念頭に置かねばなりません。革命やクーデタなどによる政変があった際には特に変更されることが多いですが、それに限らず、リビアやベネズエラのように独裁者の意向で変わったり、政策の変更に連動したり、ナショナリズム昂揚による国民の気分の変更を企図したりしての変更もあるので、実際に外国旗を使用する場合は要注意です。
  7. 日本の国旗を掲げずに外国の国旗のみを掲げてはいけません。来訪する外国人を歓迎する場合でも、「日の丸」を並べて掲揚してください。
  8. 1本のポールにいかなる形であれ、二カ国以上の国旗を掲げてはいけません。ポールの数が足りない場合は、自国の旗である「日の丸」を掲揚し、歓迎する外国人の国旗はたくさんの小旗にし、「日の丸」とともに振って歓迎の意を示しましょう。
  9. ステージ上や門等に「日の丸」と外国の国旗を掲揚する場合は、歓迎すべき国の旗は上位に掲げるべきです。すなわち門の内側から見て右側、外側から見て左側となります。
  10. 国連旗はいかなる国旗よりも上位に置かれるべきであると決められています。国旗や都道府県・市町村の旗は団体旗より上位に置かれねばなりません。
  11. 雨天の場合は、屋外での国旗掲揚は差し控えるべきです。旗布が水分によって重くなり、翻らなくなるばかりか、みすぼらしくなるからです。また、傷みやすくなります。
  12. 弔意を表わす場合は、すみやかに半旗を掲げます。これは一度、竿頭まであげた旗を途中まで降ろすという掲揚法です。また、竿頭を黒い布で覆ったり、黒いリボンで覆うというやり方もあります。但し、サウジアラビアの国旗だけは、いかなる場合でも半旗にしてはいけません。
  13. 国旗掲揚にあたっては、起立して両手の中指を伸ばす形で姿勢を正し(「気を付け」の姿勢とし)、脱帽することにより国旗とそれが象徴する国家と国民に敬意を表します。
  14. 日本国旗と外国国旗を併揚する場合
  15. a. 国旗は、原則として自国旗に最優先権が与えられますが、今日、日本では、とくに外国に敬意を表わすという意味から、外国国旗をポールまたは壁に向かって左側(上位)に、日本国旗を右側に掲揚するのが一般的な形となっています。なお、アメリカ、フィリピンなど自国旗常時優先主義をつらぬいている国があります。

    b. ポールを使用する場合は、併立しても、交差しても構いません。ポールの交差する部分で外国旗が手前になるので、注意が必要です。

    c.2カ国の国旗を併用する場合は、それぞれを多数用意して交互に、三脚に立てて並べるという用い方もあります。

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