ヨーロッパ諸国の国旗の特徴は星がないこと。もちろん世の中、例外のない規則はない。わが郷里秋田でも女性は原則的に美人であるが…というようなものだ。
星が出てくるのはボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ、そしてクロアチアとスロベニアとクロアチア3国の国旗の中の紋章の中だけ。ボスニア・ヘルツェゴビナの国旗に泣かされた。1998年2月7日、長野冬季オリンピックの開会式が行われたが、その直前になってようやく決定された。コソボの国旗はコソボの国旗は、その10年後、2008年2月17日に独立を宣言したのと同じ日に採択された。
NATO(北大西洋条約機構)の旗
コソボの地形がシルエットで描かれ、その上に6つの白い星。これはコソボ国民のほとんどが、アルバニア人(全体の8割以上)、セルビア人、トルコ人、ロマ(アッシュカリィおよびエジプト人を含む)、ゴーラ人、ボシュニャク人を表し、その調和と団結を表している。
そうはいっても、現実にはアルバニア系の人たちは、このコソボの国旗を認めてはいるが、まったくイメージの異なるアルバニアの国旗を自分たちの国旗であるかのよう愛着を持って掲揚している。
コソボは、旧ユーゴスラビアを構成していた最大勢力であるセルビアの一地方だったが、アルバニア系の人たちが多いことから、ベオグラード(旧ユーゴの首都であり、現在のセルビアの首都)の意向からの分離傾向を強め、これを力で抑えようとしたセルビアに対し、NATOは空爆までして阻止を図ったことは、ついこの間のこととして忘れ難い。そのNATOの旗もEUの旗と同じ明るめの青が基本である。
キュウユーゴ崩壊の過程とそこにおける「人間とは」を問うすぐれた論文がある。わが仲間の長 有紀枝(おさ ゆきえ)認定NPO法人難民を助ける会理事長(立教大学教授)の「人間の安全保障」に関わる学位論文である。そしてその論文を上梓したのが『スレブレニツァ あるジェノサイドをめぐる考察』東信堂(2009)であり、また、それをもとにした『入門 人間の安全保障 ― 恐怖と欠乏からの自由を求めて』(中公新書)では、あの複雑なユーゴスラビアの崩壊過程を初心者にもわかりやすく述べているだけではなく、より広範な国際的な人道問題を解説したしている必読の書となっている。
それはさておき、コソボの国旗はEU(欧州連合)の旗の影響を大きく受けている。EU旗の青は空を表し、星の円環はヨーロッパの人々の連帯を表す。12個という星の数は最初から決まっていたもので、「完璧」と「充実」を表し、加盟国の数を表すものではなく今後とも増減はない。
アルバニアの国旗は、赤地に黒の双頭の鷲を中央に描いた旗。この国旗のデザインは、15世紀にオスマン帝国の支配に抵抗し、一時(1443年 – 1478年)独立を勝ち取った中世アルバニアの英雄、スカンデルベクの紋章にちなんだものである。
この国旗は1992年4月7日に正式採用されたものだが、それ以前でも少しずつ違うが全体として赤地に双頭の鷲というデザインを使用し続けていた。1946年から1992年の共産主義政権下では、現在の国旗に黄色の縁取りの赤い星が加わっていたものを使用していた。その前のアルバニア王国、アルバニア公国時代も同様であった。
なお、コソボでもアルバニア系の大部分の人々は、独立前、このアルバニアの国旗をコソボの旗として掲げていたが、独立以降は国旗に準じる民間旗として扱われている。現在でもアルバニア系の国民はしばしばこちらの旗を掲げている。