アイルランドとコートジボワールの国旗

被災地で暮らすSさんからの質問です。

「コートジボアールの国旗を考案するとき、先にできていたアイルランドの国旗と見間違える心配はなかったのでしょうか」。

Sさん、もしかして佐々木、菅原、佐藤さんのどなたかも。この3つの姓が、被災地、特に宮城県には多い(実はわが秋田県にも多い)ですね。それはさておき、アイルランドとコートジボアール(象牙海岸、英語ではIvory Coast)の国旗は左右が逆です。

コートジボアールの国旗のオレンジ色はサバンナを表しています。国土の北半分がサバンナであり、豊穣の台地といわれています。白は平和、緑は国土の南半分の森林であり、希望を意味しています。

他方、アイルランドの国旗の緑はケルトの伝統を、オレンジは遠くウィリアム3世(オレンジ公ウィリアム)との縁への共感を持つ王党派の支持者を、白はその両者の平和を表す配色です。

この質問への回答をためらっていたのは、どっちがどっちなのか、私もよく間違えてき宝です。ところが先だっての週刊文春(3月21日号)、この表紙の号です。

描いた和田誠さんの「表紙はうたう」という巻末のショートエッセイにこうあります。

ダニーボーイ

3月17日はアイルランドの祝日、セントパトリックスデイ。アイルランドにキリスト教を伝えた聖パトリックの命日です。この日、人々は緑色の衣装にシャムロックをつけて祝います。表紙に描いたのもそんないでたちのレプラコーンの人形。この人はアイルランドの伝説の妖精です。題名はアイルランドに古くから伝わる曲。

Sさん、この表紙の絵を覚えておきましょう。緑がアイルランドの民族色ということです。シャムロックはご存知、アイルランドの国花です。本来は、マメ科のシロツメクサやコメツブツメクサなどのクローバー、カタバミ科のミヤマカタバミなど、葉が3枚に分かれている草の総称です。

432年ごろにアイルランドで宣教していた聖パトリックは「シャムロックの葉が3つに分かれているのは<三位一体>を表しているのだ」と説明して布教に活用しました。
ただ、日本では、しばしばシャムロックと四葉のクローバーが混同されることがあり、この表紙の絵も、四葉のクローバーになっているようです。

アイルランドではシャムロックは全国的に見られるため、「エメラルド・グリーンの島」とも呼ばれることがあり、聖パトリックの命日である3月17日は聖パトリックの日 と呼ばれ、この絵のようにシャムロックを帽子や襟に飾るなどして祝う習慣があります。

日本には乗り入れていませんが、尾翼にシャムロックを図案化している航空機は、アイルランドのフラッグ・キャリアであるエアリンガス航空の機体です。

「ダニーボーイ」はアイルランドの古謡「ロンドンデリーの歌」のこと。ロンドンデリー地方は北アイルランドとしてイギリス(正式名は、United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland )に残留し、来る6月17、18の両日、そこでG8サミット(先進国首脳会議)が開催されることになっています。


トーマス・フランシス・マハー

ところで、このアイルランドの旗を最初に使ったのは、トーマス・フランシス・マハー(Thomas Francis Meagher、1823~1867)。アイルランド生まれのナショナリスト。イギリスからの独立を唱道し、反逆罪で死刑を宣告され、タスマニア島(オーストラリア)に流刑となりました。しかし、5年後の1852年、ニューヨークへの逃亡に成功、法律とジャーナリズムを学び後進の指導にあたった。南北戦争に際しては、北軍の准将にまで昇りつめ、アイリッシュ旅団(Irish Brigade)を組織し、果敢に戦ったことで名をなし、政治家となった人。

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