1997年に香港が英国から中国に返還され、それまでの香港の旗と英国旗「ユニオン・ジャック」が引き降ろされ、新しい香港の旗と中国の国旗「五星紅旗」が交代した。
しかし、「一国二制度」を50年間は続けるということになっているにかかわらず、何事も自由だった香港の人たちにしてみれば、忍び寄る中国からの圧力は「約束が違う」ということが多々あるようだ。
5月14日付産経新聞は、写真とともに、そのあたりの事情をよく伝えてくれている。
産経新聞より
■買いあさり→日用品不足 選挙介入→揺らぐ民主化
香港で“嫌中感情”が改めて広がっている。中国本土から押し寄せる人々による日用品や不動産の買いあさりで物価や不動産価格が高騰して供給不足に。おカネは落とすが、観光客のマナーは目を覆うばかり。昨年の香港長官選では中国政府の政治介入も明らかになり「一国二制度」も揺らいだ。そうした不満が募る中で、「私たちは中国人ではなく香港人だ」と主張、1997年以前の英国植民地時代の旗を掲げる運動を繰り広げる青年がいた。
「返還後の16年で香港の法による支配や民主的な価値観は中国によって徐々に破壊された」。こう話す香港人、ダニー・チャン氏(27)が、英国植民地時代の旗を掲げるグループの発起人だ。
「植民地時代に戻りたいわけでも香港独立を求めているわけでもない。北京政府が口をはさまない香港人による香港の民主的な統治を求める象徴として、この旗をデモのたびに掲げている」。7月1日に計画される民主化要求の大規模なデモにも参加する予定だ。
自分を中国人ではないと考えるチャン氏は、「香港が1842年の南京条約で清から英国に割譲されて170年以上。中国人と香港人は生活習慣や政治信条で隔てられている」と話す。とりわけ返還後、香港に比較的自由に往来可能となった中国本土の人々が「買いあさり」などで香港人の生活環境を圧迫したこと、50年間保障された「一国二制度」が中国政府の選挙介入でほごにされたことに反発している。
チャン氏のグループへの直接の参加者はまだ数十人と少ないが、ネットサイトでは3万人近くが支持を表明している。一方、「デモの際にこの旗を見て殴りかかってきた中国本土の人が何人もいた」と、多様な価値観を認めず、粗暴に振る舞う人々からの圧力を受けていることも明かした。
チャン氏は、「香港人も中華民族に属する華人には違いないが、中国共産党の支配下に置かれた『中華人民共和国人』とは異なる」と複雑な心情ものぞかせた。