2月14日の朝日新聞に、南米のベネズエラで12日、
民主行動党など主な野党が、選挙管理委員会の協力を得て予備選を実施し、10月の大統領選で4選を目指すチャベス現大統領への対立候補として、ミランダ州のエンリケ・カプリレス知事(39)に候補を一本化することを決めた。
という記事が出ています。
1999年に就任したチャベス大統領は「21世紀の社会主義」を掲げ、医療や教育の無料化などで貧困層の支持が厚いのですが、半面、富裕層や中間層の不満も募っています。チャベス大統領側は既に09年に憲法を修正して、大統領の再選制限を撤廃しており、多選・独裁への路線を目指してきたといっていいでしょう。これに対し、危機感を強めた複数の野党が共闘を決めたという経緯です。
チャベス大統領は昨年、しばらく公務を離れ、キューバで治療に専念し、がんを患っていることを明らかにしています。重病説もありますが、今年の年頭演説では9時間半ぶっ続けでスピーチし、健在ぶりをアピールし、また別の日には、軍事パレードで健在さを見せつけました。
現在のベネズエラ国旗と紋章。実際の州の数は7。
東隣のガイアナ領有を求めて8星。
ベネズエラの旧国旗と紋章。
白馬の向きが逆だった。
そのチャベス大統領は、2006年3月に突然、国旗の一部を変更しました。
すなわち、国章に描かれている紋章の馬を「右向き」から「左向き」に変更されました。これによって、国旗、国章、紙幣、コインなどいろいろなものをつくりかえなくてはならず、膨大なりコストがかかっているはずです。馬の向きを変えたことについて、チェベス大統領は「ベネズエラは常に前向きである。振り返ってはならない」と説明しましたが、それなら馬の進行方向が右向きであろうと左向きであろうと構わないわけで、それをあえて左向きにしたことについては、左翼政権を暗に象徴しているのではないかという噂さえあります。
ベネズエラでは、1954年の法律で、政府用の国旗には国章を擁すると制定され、民間が使用する場合には国章を付さないのが普通でしたが、ウィキペディアによれば、「2006年8月2日のWBAライトフライ級タイトルマッチ、亀田興毅対ファン・ランダエタの試合では国章が入っていた。また、ヤクルトスワローズ時代のロベルト・ペタジーニ及び東京ヤクルトスワローズ時代のアレックス・ラミレス(その後、読売ジャイアンツで活躍、2012年からDeNAベイスターズに移籍)が打席に立つと国章が入った国旗が応援席に掲出された」ということですから、民間で国旗を使用する場合でも紋章を付けるようになったとみるべきでしょう。これまたチャベス大統領の権威主義的発想からなのかも知れません。
もっとも、紋章がついていないと、かつて大コロンビアとして1つの国であったコロンビア、ベネズエラ、エクアドル三国の国旗の区別が至難となること、インクジェットで複雑なデザインの国旗が製作しやすくなったことなども、紋章付の国旗の使用範囲を広めたことではないでしょうか。同様に、中米5カ国もかつては1つの連邦として独立したものがその後、分離したのですが、国内では紋章をつけない国旗も多いのですが、最近ではほとんど紋章のついたデザインのものを掲揚することが多くなっています。
また、2006年の国章変更時に、国旗中央の星の数が1つ増えました。これはベネズエラが要求している東の隣接地をさすものとされていますが、そこはガイアナとして国連に加盟している独立国です。このため、8つ目の星については内外で異論が多く、7つに留めている国旗も使用されています。
さて、10月の大統領選挙で、もし、チャベス大統領がカプリレス候補に敗れるようなことがあれば、ひょっとして、ベネズエラの国旗がまた以前のデザインに戻るかもしれません。私が往年の有名な「見返り美人」の切手が好きなせいでしょうか、ベネズエラの馬も見返っている姿のほうがいいように思いますし、星も他国の分まで並べるのは如何なものかと腕組みをしてしまいます。
なお、星の数を自国が保持していない地域の分まで並べている例としては、ほかにボリビアの国旗の星の数という例があります。
追記:2月23日付産経新聞の報道によると、ベネズエラのチャベス大統領(57)は2月21日、新たに直径約2センチの腫瘍が見つかり、数日以内に摘出手術を受けると発表しました。この腫瘍は、昨年にがん性腫瘍を摘出した場所にできたというが、具体的な症状や部位など詳細については明かされていません。大統領は「(死去が近いなどの)噂が広がるから(手術について)発表した。前回より簡単に終わるだろう」などと述べ、体調悪化に関する懸念の払拭に努めています。