1964年10月10日、オリンピック東京大会開会式の直前に、国立競技場で撮った筆者(組織委国旗担当専門職員)
よく訊かれるのは、いつ、どうして、国旗に取り付かれたのかということです。
今でもはっきりと覚えています。秋田大学学芸学部付属小学校4年生の時のことです。世界地図の周辺に掲載されていた数十枚の国旗図を眺めていて、「どうして北ヨーロッパの国々の国旗は似ているのだろう?」と疑問を感じ、担任の教師に訊いたのが始まりです。
「互いに近いからかね。ま、それより算数、国語・・・しっかり勉強しなさい」。
おそらくその先生はお困りになった末、私が国旗にだけとらわれないようにと導いてくださったのでしょうが、今、振り返ってこの先生の一言は実に正しいと思います。
さまざまな勉強をすると、国旗を知る上で、そのどれもが役立ち、今になってなお、国旗を眺めていると新しい感動や発見が続き、興奮するのです。
爾来60余年、今でも、1年中、国旗の図表を持ち歩いています。というのは、外国旅行や長旅の時などこれを眺めていると、時間を忘れるくらい、個々の美しいデザインの背景となっているさまざまな事象が見えてくるからです。
「ヨーロッパの国旗にはどうして星がないのだろう?」
「ブラジルとオーストラリアの国旗の南十字星はなぜ左右が逆なのだろう?」と
気付いたときなど、私は完全に小学校4年生に戻っていました。
いうまでもなく、国旗にはその国のさまざまな要素が込められています。アメリカやイギリスのように建国の歴史を示すものもあれば、ポーランドやメキシコのように伝説に由来するものもあります。「日の丸」もそうですが太陽や月などの天体を描いたもの、キリバスやナウルの国旗のように地理的位置を示すもの、カンボジアやレバノンのように世界遺産を真ん中に描いた国旗もあります。
東・東南アジアの国旗には必ず赤が入り、緑がなく、イスラム諸国の国旗の多くには緑があって青がない、ヨーロッパの国旗には三色旗が多く、星がない、旧ソ連邦(NIS諸国)の国旗は、ソ連の国旗ともロシアの国旗とも似ていない、南十字星があったら南半球の国、緑黄赤ならアフリカの国旗、中南米の国旗には紋章付きが多いなどなど、世界の国旗にはさまざまな特徴や相互の関連性があります。
そしてそれさえ覚えたら、国旗の識別など、実は小学生にも難しいことではありません。ですから、国旗を知ることはその国を知る窓口になると言えるのです。
私は毎日ブログを更新し、国旗についてもたびたび触れています。ありがたいことに日々二千人くらいの人がご覧くださり、小学生から専門家の方に至るまで、内外からたくさんの質問をいただきます。国旗についてのそうした疑問に答えたものをまとめつつ、世界の国旗をこれまでにない視点で見直し、なお、一人でも多くの方々に「国際理解の第一歩としての国旗」を理解していただきたいものと念じつつ、このHPをはじめました。
多くの人たち、特に若い人たちの国際理解の第一歩となることを切望して止みません。