EU(欧州連合旗)
旧ユーゴスラビアのコソボのことは最近、日本の報道ではあまり話題になりませんが、世界的にはこの20年間、重要なニュースの1つとして、今も海外の紙面にはよく出てくる大事なニュースです。
3月1日、EU(欧州連合)はブリュッセルで開かれた首脳会議で、セルビアを加盟候補国とすることを承認しました。これによってコソボが194番目の国連加盟国になる日も近づいてきたように思います。
1999年、セルビアはコソボ紛争で、NATO(北大西洋条約機構)の空爆を受けるなど、孤立した厳しい状況にありましたが、セルビアは自国から一方的に独立を宣言したコソボとの関係改善や旧ユーゴ紛争の大物戦犯の拘束を進めるなど、EUが求めた諸条件を満たしたとみなされたのです。
また、国境の共同管理の具体的な手続きを定めることでもコソボ側と合意に達しました。コソボとのことは、2010年7月にICJ(国際司法裁判所)が独立宣言を合法と判断したのを受け、セルビアがコソボとの直接対話を開始したのですが、双方の直接対話を仲介してきたEUの努力が実ったといっていいでしょう。
このコソボの国旗は2008年2月17日の独立宣言と同時に発表されました。
青地に黄色のシルエットで国土の地形が描かれ、その上にコソボに居住する6民族の調和と団結の象徴として6個の白い星を並べたものです。
バルカン半島中部に位置するこの国は、北東をセルビア、南東をマケドニア共和国、南西をアルバニア、北西をモンテネグロに囲まれている内陸国です。1991年までのユーゴスラビア時代にはセルビアの自治州のひとつでしたが、その後、1990年代後半からアルバニアが支援するアルバニア系を主体とするコソボ解放軍とセルビアとの間で血で血を洗う激戦が行われ、NATOの軍事介入、民族殲滅(クレンジング)という20世紀末、最大級の悲惨な戦闘が続き、多くの国民が入れ替わるなど、社会構造が根本から変わる悲劇を展開したのでした。
21世紀に入ってから、コソボは国連の管理下に置かれていました。
独立宣言はしたものの、コソボを独立国として承認しているのは、国連加盟193国中、日本を含む85ヶ国(2011年10月現在)に留まり、依然、国連への加盟を認められていません。ロシア、中国、スぺイン、ルーマニアなど国内に少数民族の独立運動を抱えている国は、セルビア側についているからです。
そして、コソボの場合は、セルビアがこの国土を自国のコソボ・メトヒヤ自治州とみなしているからです。
青地に星というのは、EUの旗を連想させるものですが、それはこの国の独立に際し、EU諸国の支援を受けたことによります。
なお、コソボ国民の圧倒的多数はアルバニア人であり、国内ではアルバニアの国旗を掲げている人も多く、1国でありながら2つの国旗があるような実態ですが、それがまたセルビアにとっては許しがたい状況といえましょう。
セルビアは今回のEU首脳会議での合意を受け、EUとの加盟交渉に入ることになるでしょう。
セルビアのタディッチ大統領は、合意が「我が国の欧州での将来を保証する」と歓迎。コソボのサチ首相も「セルビアはコソボの独立をいずれ認めるだろう」と述べたと報道されています。