昨年(2011年)2月7日(北方領土の日)、一人の日本人の愚行が日本人全体のイメージを貶める事件が起こりました。東京・狸穴の駐日ロシア大使館前で、ロシア国旗を侮辱する行為があったのです。私はもとより北方領土の返還こそ、日露関係打開の第一歩だと思って返還運動には大きくかかわってまいりました。北方領土返還促進全国大会には第1回大会(鈴木善幸内閣のときに「北方領土の日」が閣議決定されたとき)の責任者を務めて以来、深く関わっていますし、北方領土への「ビザなし訪問」には1993年6月の第一回訪問から参加しています。ただ、今年のこの日は、北方領土返還要求鹿児島県民大会で講演をしており、この話は報道によるほかありません。
まずは、同9日付け産経新聞電子版から共同通信の記事をご覧ください。
東京のロシア大使館前で右翼の活動家がロシア国旗を侮辱する行為を行ったとされる問題で、ロシア外務省は8日、日本大使館の井出敬二公使を呼び、日本の当局が捜査をして犯人を処罰するよう要求した。
同外務省が出した声明では、日本側が国際義務に従い、ロシア大使館がきちんと業務ができるようにし、同様の事件の再発を防止することも求めている。モスクワの日本大使館の周囲では7日以来、若者組織の抗議デモが続いている。
もっともこの「若者組織」というのも、かってにプーチンの親衛隊等と名乗るロシアの民族主義団体です。私たちもサハリンでの学術会議「サハリン・フォーラム」に行ったときに一度、空港で「歓迎」され、ホテルの前では先回りしたこの人たちに再び横断幕とスピカーその他で、迎えられたことがあります。
他方、「Voice of Russia」はさらに詳しく報道しました。
<日本の右翼団体 ロシア国旗を侮辱>として、
<日本の右翼団体は7日、東京にあるロシア大使館付近でロシア国旗を侮辱する行為を行った。事件は、日本の右翼団体が「北方領土の日」を記念する中で発生したもの。
北方領土とは、日本が領有権を主張するロシアの南クリル諸島のことを言う。
過激派組織は引き裂かれ、落書きがされたロシア国旗を引きずりながら、東京のロシア大使館に行進した。
南クリル諸島は、第二次世界大戦の結果、ソビエト連邦に編入されている。南クリル諸島に対するロシアの主権は、国際法によって確認されている
というものです。
この記事では、「引き裂かれ、落書きがされたロシア国旗を引きずりながら、東京のロシア大使館に行進」と具体的に記述しています。もし、本当に、ロシア国旗を、落書きして、引き裂いて、引きずったのであれば、おそらくロシアによる北方領土に対する不法占拠に抗議する意味で行ったのでしょうが、礼節を重んじる国の一人として、これは相応しくない態度であり、こういう行為は許してはなりません。
当時のネットでのやり取りには注目すべき書き込みがいろいろあります。
「右翼の活動家」か何か知りませんがただのバカ者です、猛省すべきです。
我々の国旗「日の丸」は考えてみると、世界各地で「侮辱行為」を繰り返されてきました。近くでは、中国や韓国における反日デモにおいて、落書きされ、引き裂さかれ、燃やされました。
日米貿易摩擦が激しい頃には、アメリカにおいても自動車工場工員たちなどに、日本車はハンマーでボコボコにされ、日の丸はガソリンを掛けられ燃やされました。さらに昔、高度成長末期の頃には、進出した日系企業への抗議のため、インドネシア、タイなど東南アジア各地でも、日の丸は「侮辱行為」を繰り返されました。そのたびに私達日本人は、相手の無礼な行為に強い不快感を持ちながらも、相手国の国旗を侮辱するなどの同じような浅はかで愚かなレベルの行為で対抗することは決して行いませんでした。私は誇りある日本人の礼節がそれを許さなかったのだと思いたいです。
どんな良好な関係の同盟国であろうと、米国であれ豪州であれ、また、どんなに関係が悪化していても、ロシアだろうと中国だろうと北朝鮮であろうと、国歌・国旗に対しては等しく敬意を示す、これが日本的礼節であります。報道されているのが事実ならば、政府はロシア政府に、この恥ずかしい行為に対してきっちり外交的謝罪の意を示すべきです。たった一人の馬鹿者の愚行が、日本人全体のイメージを国際的にどれほど貶めてしまうか。
「泣きっ面にハチ」というべきでしょうか、その数日後、NHKは、11日放送の「ニュース7」で、上下が反対になったロシア国旗の映像が流れたとして、12日の同ニュースで、「気付かずに放送し、失礼しました」とお詫びするということがありました。
NHK広報部によると、日露外相会談のニュースの中で、ロシアの行政機関で掲げられていた国旗の資料映像を使ったのですが、本来上から白、青、赤の横線のロシア国旗が逆さまに掲揚されていたという、指摘が視聴者からあったのだそうです。NHKは、11日放送の「ニュース7」で、上下が反対になったロシア国旗の映像が流れたとして、12日の同ニュースで、「気付かずに放送し、失礼しました」とお詫びしたということです。
この報道を私は直接見ていませんので、後半は「ポチョムキン通信」のHPより引用しました。