フォークランド紛争から30年、依然続く対立①

英領フォークランド(アルゼンチンではマルビナス)諸島に、領有権を主張するアルゼンチンが軍を進めてから去る4月2日で満30年になりました。

アルゼンチンといえば、南緯を思い浮かべますか? 南北アメリカ、そして西半球の最高峰 アコンカグア(6,962m)、「ラ・クンパルシータ」をはじめとするタンゴの名曲、そしてバンドネオンの巨匠ピアソラ(1921~92)のあの音色。てサッカー大国。空色と白、昔はサッカーワールドカップでのアルゼンチンの活躍で印象的でした。15回出場して優勝2回、マラドーナ、メッシ…、この2色のユニフォーム姿がまぶたに焼き付いています。

私は世界3大滝といわれるビクトリアの滝しか知りませんが、これもすごいですよ。カナダとアメリカの国境でもあるナイアガラの滝は水量で、ジンバブエとザンビアの間にあるビクトリアの滝は落差と「月光の滝」で、そしてブラジル、パラグアイ、アルゼンチンに跨るイグアスの滝は曲がりくねった複雑な水面で、いずれも甲乙つけがたい名勝です。

それはさておき、フォークランド諸島をめぐる動きをここで少し振り返り、現状を見てみましょう。フォークランドでの武力紛争は当時のアルゼンチン軍事政権が、両国で話し合って解決するよう求めた1965年の国連決議を反古にし、左派弾圧や経済の停滞から国民の目をそらすため82年に同島に侵攻して勃発しました。翌年になって、サッチャー政権の英国は空母2隻を主力とする部隊を派遣し、予想を超える反撃にも遭いましたが、6月14日にアルゼンチン軍が降伏。両軍で当時の全島民の数より多い死傷者、すなわち死者約900人、負傷者約1800人を出すという結果でした。両国は2009年、国連に同諸島周辺の領有権を申請しましたが、国際世論は話し合いによる解決を期待し、いずれも凍結されています。

今年になって、2月、英軍でヘリコプターの副操縦士を務めるウィリアム王子が島に派遣されたのを機に両国の緊張が高まりました。そうした中で4月、今度は英海軍が最新鋭ミサイル駆逐艦「ドーントレス号」を周辺海域に向かわせました。他方、アルゼンチン政府は同諸島に寄港した船舶の入港を拒否し、さらに国内大企業の幹部に英国からの輸入を止めるよう求めたほか、同諸島周辺での石油開発に関与する企業に対し法的手段や制裁措置を取る考えを表明するなど、強硬姿勢をエスカレートさせています。

同新鋭艦の派遣自体は英国側の発表では、現在配備している小型駆逐艦を帰国させての通常の配備としていますが、「ドーントレス号」は大型かつ高性能で、アルゼンチンには一定の脅威を与えるものとなるでしょう。半年間、滞在の予定になっています。

一方、アルゼンチンのフェルナンデス大統領は2月、「英国の植民地主義は人間の恥」と反発し、「英国は領有権問題があることを意識しつつ島を軍事化している」「マルビナスはわが国固有の領土。植民地支配はもう古い」と奪還を目指す方針を強調し、国民向けの演説で英軍による王子の派遣を批判、聴衆から大きな拍手を浴びました。


フェルナンデス大統領

この30年前の紛争が依然治まっていない背景には、アルゼンチンのナショナリズムの高まりに加え、周辺の海底油田をめぐる利権争いがあり、双方が鋭く対立しても一歩も引かない姿勢であり、当分、対立が終息に向かう気配はないと、内外のメディアは見ています。

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