国旗を知ることはその国のことを理解する窓口であり、国際理解や国際交流の第一歩だと思います。そのことは戦前から日本でも常識になっていたようです。ですから、戦前の教科書を見ると、驚くほど丁寧に主要国の国旗について書いてあるのです。
今日一国家を形成する国々にして、国旗の制定せられざる所なし。国旗は実に国家を代表する標識にして、その徽章・色彩にはそれぞれ深き意義あり。今、我が国を始め主なる諸外国の国旗に就いて述べん。雪白の地に紅の日の丸をえがける我が国の国旗は、最もよく我が国号にかない、皇威の発揚、国運の隆昌さながら旭日昇天の勢ありますを思わしむ。さらに思えば、白地は我が国民の純正潔白なる性質を示し、日の丸は熱烈燃ゆるが如き愛国の至誠を表わすものともいうべきか。
(ここで英国旗の由来を述べていますが、別の項で紹介します)
アメリカ合衆国の国旗は一定不変の部分と、変化を許されたる部分とより成る。すなわち、赤・白合わせて13条の横筋は、独立当時の13州を表わすものにして、永久に変化することあらざれども、藍地中の星章は、常に州の数と一致せしむるを定めとす。現今は星章の数48個なり。
藍・白・赤3色を以って縦に染分けられたるは、フランスの国旗なり。この3色は自由・平等・博愛を表すものと称せらる。
フランスの国旗が縦に3色に分ちたるに対して、黒・赤・金の3色を横に染分けたるものはドイツの国旗なり。
中華民国の国旗は赤地の上方一隅を青にし、その中央に12の光芒あります白日の形を染抜きたるものなり。この赤・青・白の3色も自由・平等・博愛の意を表せるものなりという。
イタリヤの国旗は、緑・白・赤の3色を縦に染分け、中央の白地中に王家の紋章を表せり。これイタリヤ中興の主エンマヌエル王、国土統一の時、その家の紋章の色なる白と赤とに、統一の成功を祈る希望の色として緑を加え、さらに王家の紋章を配したるものなり。
かくの如く各国の国旗は、或いはその建国の歴史を暗示し、或いはその国民の理想・信仰を表すものなれば、国民の之に対する尊敬は、即ちその国家に対する忠愛の情の発露なり。故に我等は、自国の国旗を尊重すると同時に、諸外国の国旗に対しても、常に敬意を表せざるべからず。
これは第3期尋常小学修身書(巻3)の記述です。今の小学生はこんなにも国際理解が進んでいるのでしょうか。不安になるほどです。第一次世界大戦に敗れたドイツが連邦共和国となり、1933年にナチスが政権を取るまでの、現在と同じドイツ国旗について述べている、その時代の教科書なのです。