「真実一路」様という方から、「各国の憲法で国旗を規定している国はどのくらいあるのですか。また、日本国憲法の改正議論の中で、将来、憲法で国旗を制定すべきといった議論はなかったのですか」というご質問をいただきました。
出雲大社で毎日、掲揚されている最大の「日の丸」。
ご回答申し上げます。
1962(昭和37)年、私がまだ早稲田大学第一政経学部政治学科の学生だったときのことです。当時の憲法調査会(高柳賢三会長)の最終(中央)公聴会に「青年代表」として選ばれて、公述いたしました。
そのときに、「日本国憲法には国旗についての規定がない。これを是非、入れるべきだ」と、申し述べました。これは同調査会の最終報告書でも採択されています。但し、このほかに国旗についての議論があったかについては、当時、同調査会の専門委員をされていた松本馨早稲田大学教授(大学院時代の私の指導教授)や関係者に問い合わせたことがありますが、なかったとしか聞いていません。
各国の憲法では、今ではおそらく100カ国以上で、国旗について何らかの規定をしているかと思います。学部時代の私のゼミは比較憲法学でした。私の卒業論文は、「各国国旗の法制状況に鑑みたわが国国旗の法制化について」という、題でした。指導してくださった大西邦敏教授は、同学の泰斗でいらっしゃいました。その当時の憲法では60カ国以上に国旗を規定した条項がありました。ソ連、中国をはじめとする「共産圏」は全部そうですし、フランス、ドイツ、ロシア、レバノン、ネパール、バチカン、アフリカ諸国などがそうでした。 当時と今では国の数(憲法の数)が倍以上になっているし、新しい独立国は憲法で国旗を規定するのが普通です。 いずれ時間が出来ましたら、もっと詳しく、少なくとも学部の卒業論文程度のまとめをしたいと思っています。
そんなことで、100カ国以上かなとお答えするほかないのが、現状です。怠慢をお許しください。
ちなみに、中華人民共和国憲法から第4章・国旗、国歌、国徽、首都の条項をご紹介しましょう。
第136条
中華人民共和国の国旗は、五星紅旗である。
中華人民共和国の国歌は、義勇軍行進曲である。第137条
中華人民共和国の国章は、その中央が五星に照り映える天安門で、周囲は穀物の穂と歯車である。第138条
中華人民共和国の首都は北京である。
1999年の国旗国歌法審議の時、内閣府や国会の関係部局でも各国の国旗を研究・調査し、その資料も手元にありますが、この審議の過程では、各国憲法での法定状況については特段に議論されたことはございません。私は衆議院から参考人としてよばれで公述しましたが、そうしたデータを参考にしながら法制化に賛成する意見を開陳しました。
日本では国旗としての「日の丸」(日章旗)の地位は極めて安定していると思います。それはおそらく国旗国歌法に反対した菅直人、前原誠司といった政治家を含めて、「日の丸」を否定はしていないと思うからです。そしてそれは政治家のみならず、日本人の圧倒的大多数に受け入れられ、肯定されている国旗だろうと思うからです。