アメリカ連合(南軍)の掲げた旗① – 映画「リンカーン」でも掲揚

アメリカ合衆国代16代大統領アブラハム・リンカーンを主役に描いた映画「リンカーン」を見た、ダニエル・デイ=ルイスのまるで生まれ変わったかのようなリンカーンの風貌と演技力がすばらしかったし、また、リンカーンを特別に偉い人といった描き方ではなく、目的のためにはいかなる手練手管をも弄した史実に忠実な表現をしているのに、感心し、興味を駆られた。


ダニエル・デイ=ルイス演じるリンカーン

奴隷解放を決めた下院前で喜ぶ支持者たち

34星「星条旗」の前で娘と話すリンカーン

1861年4月、南部11州と東部23州による合衆国政府軍とが戦闘状態となり、ここにアメリカ南北戦争が始まった。そのときのワシントン側の国旗は33星、同年7月4日に星の数が1つ増え、34星になったことは前回述べた。

対する南部11州、前年12月にはサウスカロライナ州がまず合衆国からの脱退を宣言。翌年2月までにミシシッピ、フロリダ、アラバマ、ジョージア、ルイジアナ、テキサスの6州がこれに続いた。2月4日、この7州が結束してアメリカ連合国アメリカ連合国Confederate States of America(CSA)を結成、ジェファーソン・デイヴィスが暫定大統領に指名され、同年11月に行われた選挙で初代大統領となった。

この間、3月4日に合衆国でリンカーンが大統領に就任した。これを受けて4月12日、南軍が連邦のサムター要塞を砲撃して戦端が開かれた(サムター要塞の戦い)。5月までにバージニア、アーカンソー、テネシー、ノースカロライナもCSAに合流した。

但し,奴隷州であってもデラウェア、ケンタッキー、メリーランド、ミズーリ、それにバージニア州の西部(後にバージニア州から分離してウェストバージニア州となる)は合衆国に残留した。

CSA最初の国旗は「The Stars and Bars」。63年5月までの2年余り用いられた。7つの星はいうまでもなく、最初に合衆国を離脱した7州を表す。星の数は1861年11月には13個に増えている。アメリカ連合国を構成するのは当初7州、その後4州が加盟し、11州であったが、奴隷州であるミズーリ州とケンタッキー州では反対党派が連合に合流したため、南軍側では13州と計算することもある。

このデザインの致命的欠点は、実際に掲揚されているときに本来の「星条旗」との区別が難しいという点であった。

このため、アメリカ連合軍二番目の国旗として63年5月1日、「The Stainless Banner」を採択した。

南軍旗のデザインを左上に持って来て連合国旗であることを強調した。しかし、このデザインではフライの部分が白のため、降伏の意を表す白旗とよく見間違えられた。公式には「南部人の一点の汚れも無い美徳と誇り、北部の圧制と侵略に対する独立への闘志」を意味するとされたが、このstainlessということばは言うまでもなく、「錆びつかない」「潔白の」ということである。このデザインでは白の面積が大きすぎることから、今日では白人支配の象徴という史家もいる。

そこで,白旗と間違われないようにという意味もこめて、三番目の国旗「Blood Stained Banner」が1865年3月4日(連合国崩壊の寸前)に制定されたが、わずか1か月で首都リッチモンド(バージニア州の州都)が陥落して終戦となった。

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