デンマークの国旗は、オーストリアやスコットランドの国旗と並んで、現在に続く最も古い国旗の1つ。「Dannebrogの旗」と呼ばれています。原意は「デンマークの布」。しかし、このDannebrogの正確な発音が判らずに、大使館のパーティで直接、大使に伺っても語尾がはっきりと聞き取ることができませんでした。
このほど、ようやく確信を持つことができる表記に出会いました。外交官としてデンマークやスエーデンに駐在し、北欧文化協会理事長でもいらしたスカンディナビア史の泰斗・武田龍夫東海大学教授(故人)の『物語 北欧の歴史』(中公新書)で、「ダーネブロー」と表記するのが一番いいということがはっきりしたのです。
伝説では1219年6月にワルデマール2世(勝利王、在位1202~41)がエストニアに遠征、リュンダニの戦いで敗戦寸前に陥った時、将兵は白い十字を有する赤い旗が天から舞い降りてくるのを見、これを神のお告げと信じたデンマーク軍は、奮起して最後の勝利をおさめたと言われています。他の説では、ローマ皇帝からこの旗を授かったところ、それまで苦戦していた戦いが形勢逆転し勝利したというのもあります。いずれにせよ、この十字型旗は北欧諸国に共通ないわゆる「スカンディナヴィア十字」の基ともなりました。
政府や海軍が使用する際は、竿側の反対側(フライ)を燕尾(swallow tailed)型にします。これもまた北欧諸国に共通です。そうすることによって、十字のクロスする部分が国旗の中央にもなるのです。