エストニアの国旗。
白やぎさんと黒やぎさんが青い空の下で、お手紙をやりあっているようではないですか?
日本には唱歌、童謡、抒情歌といった詩も曲もすばらしい歌がたくさんあります。10年ほど前、私はそうした歌についての大事な話を『歌い継ぎたい日本の歌-愛唱歌とっておきの話』(海竜社)という本を書きました。こどもたちや次の世代の人たちに、この大事な日本文化をしてほしいという願いからです。
昔、松田トシ先生というクラシック歌手の方が、「NHK 歌のおばさん」というラジオ番組に出演していました。全国のこどもたちに大人気でした。毎朝8時45分から15分間、こうした歌を歌いながら子どもたちにいろいろお話するのです。それが10数年間も続いていました。
松田先生は昨年12月、96歳で他界されましたが、とても素敵な先生でした。私はその最後の弟子です。
さて、歌と国旗、もちろん「日の丸の歌」(文部省唱歌)もありますが、唱歌・童謡などが大好きな私は今でも耳にしたり歌ったりするたびに、国旗を思い出してしまうのです。
例えば、「やぎさんゆうびん」(作詞:まど みちお、作曲:團伊玖磨 )です。「やぎさんゆうびん」「ぞうさん」「ふしぎなポケット」などの詩でよく知られるまどさんはことしの11月に103歳になります。團さんは先年、亡くなられました。
「やぎさんゆうびん」は戦前の1939年に作られた詩で、1953年にNHKラジオで放送された曲です。
1.
白やぎさんからお手紙着いた
黒やぎさんたらよまずに食べた
しかたがないのでお手紙書いた
さっきの手紙のご用事なあに
2.
黒やぎさんからお手紙着いた
白やぎさんたら読まずに食べた
仕方がないのでお手紙書いた
さっきの手紙のご用事なあに
これではいつまでくりかえしても「ご用事」が分からなくなるところがおもしろいですね。
この歌についてはさまざまな説や説明がありますが、もちろんみんな想像です。まどさんがこういう意味だと言ったことはないようです。
でも、手紙の中身はなんだったんでしょうね。白やぎさんからの最初の手紙には「いっしょにお食事しませんか?」と書いてあったのでは?という人もいます。
おたがいになんども手紙のやりとりをしたのですが、いつも食べちゃうのでわからなくなり、しょうがないので黒やぎさんは白やぎさんに会いに行った、そしたら食事へのおさそいだということがわかったというのです。
でも、こんどは黒やぎさんも白やぎさんも手紙を食べすぎておなかがいっぱいだったので、「こんどね」といってお別れしたのかもしれません。
長いお話になりましたが、「やぎさんゆうびん」で私が思い出すのは南アフリカのボツワナとバルト海に面したエストニアの国旗です。
みなさんも、この歌を歌いながら2つの国旗をおぼえてくれたらうれしいな。