7大陸最高峰を登頂した人② – 国後島在住ロシア人の偉業

河野千鶴子さん(66)がヒマラヤのダウラギリ(8167m)で行方不明になったことは先に触れた。その河野さんは7大陸最高峰を征服した登山家である。


「南クリル地区」の旗。爺爺岳(1822m)からの日の出と鮭、漁網

しかし、昨年12月29日付の国後島の地元紙「ナ・ルベジェ(国境にて)」によれば、同島の古釜布(ふるかまっぷ、ロシア人の呼称はユジノクリリスク=南クリルの町)に住むドミトリ・ソコフ氏らロシア人登山隊が同月25日16時15分(チリ時間)、南極大陸の最高峰ヴィンソン・マシフ(4897m)山頂に達し、ソコフ氏は26日、同紙へその旨、電話で報告してきたという。

それによれば、ソコフ氏は山頂に「南クリル地区」(国後、色丹の両島と歯舞群島)の自治体旗を掲揚したとのこと。

この旗を立てたことは気に食わないが、個人としてのソコフ氏の偉業は讃えたい。関連した報道などによれば、同氏は

2007年にキリマンジャロ(5,895m) タンザニア
2009年にアコンカグア(6,962m) アルゼンチン
同年にコジオスコ(2,228m) オーストラリア
2010年にマッキンレー(6,194m) 米・アラスカ州
2011年にエベレスト(8,848m) ネパールと中国
2012年にエリブルス(5,642m) ロシア


ネパールの国旗

中国の国旗

ロシアの国旗

欧亜にまたがる最高峰。ロシア領内。第二次世界大戦中の1942年、ブラウ作戦によりドイツ軍山岳部隊がソ連軍の山岳部隊と交戦しながらも登頂する。本来の作戦と無関係のこの登頂にヒトラーは激怒、司令官ヴィルヘルム・リスト元帥の解任の一因ともなる。ドイツ軍は同年末にはこの地域から撤退し、山頂のドイツ国旗(ハーケンクロイツ)は、ソ連軍によって撤去された。

ところで、7大陸の最高峰はどこかについてはいくつかの説がある。主なくいちがいは、ヨーロッパの最高峰はエルブルス山ではなくモンブランとする場合もある。

アジア大陸:エベレスト(ネパール・中国)
北アメリカ大陸:マッキンリー(アメリカ)
南アメリカ大陸:アコンカグア(アルゼンチン)
アフリカ大陸:キリマンジャロ(タンザニア)
南極大陸:ヴィンソン・マシフ(南極大陸)

この5つについては異存はないが、ヨーロッパ大陸の最高峰をエルブルス山(ロシア)とするのが妥当か。常識的にはモンブラン(4811m、フランスとイタリア)が通説だ(った?)。というのは、長い冷戦期にあっては、エルブルス山は西側の登山家には登頂が認められていなかったからだ。

ま、それも良しとしよう。しかし、オーストラリア大陸ではコジオスコ(オーストラリア)が確かに最高峰だが、オセアニア州(オーストララシア)となると、プンチャック・ジャヤ(4884m、インドネシアの西イリアン)の方がコジオスコよりも2,000m以上高い。

しかし、しかしである。ここはソコフ氏の偉業に拍手を送ろう。私は前述のように秋田・山形県境の鳥海山への70歳登頂を地元のその名も吹浦(ふくら)観光協会から「お止め下さい」と言われた程度の身なのだから。

ただ1つ、ソコフさんよ、日本の固有領土である北方領土不法占拠の象徴のような、「南クリル」地区旗を立てたのは不愉快である。

山頂に立つ人は、そのい山頂を保有する国の国旗、または自らが昇っていた国の国旗と自国の国旗を立てるのが、本来ではないか。エベレストに初登頂したヒラリー(NZ出身、英国人)とテンジン(ネパール人)、マナスルに初登頂した日本隊もそうしたのは強烈な記憶として、私たちの世代には脳裏に刻まれている。

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