赤と青、そして赤と青のしましまのチョッキ


13世紀の伝説に由来するデンマークの国旗

古くから使われ、13世紀初頭の伝説に由来すると言われるオーストリアの国旗

小学校1年生用の教科書『あたらしい こくご』(東京書籍)に「おとうとねずみ チロ」(もりやま みやこ 文  かどた りつこ え)と題して、こんな話が載っています。

ある3びきの ねずみの きょうだいの ところへ、おばあちゃんから 手がみが とどきました。
それには こんな ことが かいて ありました。

あたらしい けいとで、おまえたちの チョッキを あんで います。けいとの いろは赤と青です。 もう すぐ あみあがります。たのしみに まって いて ください。

さあ、3びきは 大よろこび。
「ぼくは 赤が いいな。」
にいさんねずみが いいました。

「わたしは 青が すき。」
ねえさんねずみが いいました。

「ぼくは 赤と青。」
おとうとねずみが いいました。

「チロのは ないよ。」
にいさんねずみが いいました。

チロと いうのは おとうとねずみの 名まえです。
「そうよ。青いのと 赤いのだけよ。」
ねえさんねずみが いいました。

「そんな こと ないよ。ぼくのも あるよ。」
チロはあわてていいかえしましたが、ほんとうは、とても しんぱいでした。

もしかすると、おばあちゃんは いちばん 小さい チロの ことを わすれて しまったのかも しれません。
「そうだったら、どうしよう。」

にいさんねずみや ねえさんねずみと ちがって、チロは、まだ 字が かけません。

だから 手がみで おばあちゃんに たのむ ことも できないのです。

「そうだ、いいこと かんがえた。」
チロは そとへ とび出して いきました。

どんどん どんどん はしって いって、おかの 上まで のぼりました。
おかの てっぺんの 木に 立つと、たにを はさんで、たかい 山が 見えました。

おばあちゃんの うちは、 あの 山の ずっと むこうがわに あります。
「おばあちゃあん-・・・・・・」
チロは、ひとこえ よびました。

すると、まあ、どうした ことでしょう。
「おばあちゃあん、おばあちゃあん、おばあちゃあん、おばあちゃあん・・・」
チロの こえは、くりかえし ひびきながら、だんだん だんだん とおく なって いくでは ありませんか。

「ぼくの こえが、とんでった。おばあちゃんちへとんでった。」
チロはうれしがって とびはねると、まえよりも こえを はり上げて いいました。

「ぼくは、チロだよう。」
すると こんども チロの こえは、くりかえしながら だんだん ほそく、小さく なって いきました。

チロは、大きく 口を あけ、いちばん だいじな ことを いいました。
「ぼくにも チョッキ あんでね。」
チロは「あんでね。」が きえて しまうまで、じっと 耳を すまして いました。

なん日か たって、おばあちゃんから 小づつみが とどきました。
中には、けいとの チョッキが 3まい 入って いました。

いちばん 大きいのが、赤。つぎが、青。小さいのは、赤と 青の よこじま でした。
「あ、しましまだ。だあいすき。」
チロは さっそく チョッキを きると、おかの てっぺんの木へ かけのぼりました。
「おばあちゃあん、ぼくは チロだよう。しましまの チョッキ、ありがとう。」
チロは大ごえで さけびました。
そして、「ありがとう。」が きこえるのを まって、もう いちど、こんどは ゆっくりいいました。
「あ、り、が、と、う。」

元日、1年生の孫の朗読(ろうどく)を聴(き)いていて、私の頭は「赤と青の国旗は?」「赤と青のしましまの国旗は?」と、世界の国旗をあれこれと思い浮かべていました。

赤だけの国旗はありません。ほとんど赤というのは、かつてのソ連、今の中国などですね。赤と白だけのこっきとなると…まずは世界で一番古い国旗・デンマーク、そしてオーストリア、日本、シンガポール、バーレーン、トルコ、チュニジア、オーストリア、スイス、モナコ、カナダ、トンガ、インドネシア、ポーランド、グルジアと15カ国あります。

国ではありませんが、オリンピックでは独自のチームを派遣する香港(ホンコン)の旗も赤と白だけですし、ペルーの国旗は国内ではしばしば紋章なしの赤白赤の縦(たて)に三等分した旗を国旗として使っています。

青だけの国旗もありません。でも、青と白だけというのでしたら、イスラエル、ギリシャ、フィンランド、ポンジュラス、ソマリア、ミクロネシアの6カ国と、国連の旗が青と白だけですね。

さらに、グアテマラ、ニカラグア、エルサルバドルという中米の3カ国では、中央の紋章の部分を取り除いた旗を、一般の人が使う場合があります。


ハイチの国旗

リヒテンシュタインの国旗

さて、チロがおばあちゃんに編んでもらった「赤と青のしましま」のような国旗はどこかな?

青と赤が直接、くっつくのは補色の関係といって、かならずしもきれいには見えないことがあり、国旗ではめったにこの2つの色がくっつくことはないのです。さがしてみましょう。

ハイチとリヒテンシュタインがそうですね。紋章(もんしょう)や冠(かんむり)がなければ同じ旗としてまちがわれかねません。1936年にベルリンで開催されたオリンピックではこの2つの国の国旗が同じで、その後、それぞれが「ちがいがわかるように」修正したのです。ハイチは19世紀の初め(いまから200年くらい前)、フランスから独立した黒人が主体の国です。その時に国旗を定めたのですが、フランスの国旗から白人を連想させる白を除いたため、青と赤になったのです。

青と赤が直接、大きく接している国旗は、ロシアです。白青赤の横三色旗です。その国旗の影響(えいきょう)を大きく受けた、チェコ、セルビア、スロバキア、スロベニアのようなスラブ民族系の国々の国旗も赤と青が接しています。ほかにもさがしてみましょうね。

ただ、実際に国旗が掲揚(けいよう)されているようすをみたら、案外、イギリスの「ユニオン・ジャック」と呼ばれる国旗やノルウェー、アイスランドの国旗、あるいはフランスの国旗が「赤と青のしましま(の国旗)」にみえるかもしれません。

このままいくと、今夜の夢、初夢は赤と青の国旗になるかもしれませんね。

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