ところで、少なくとも、幕末まで、☆の形は安倍清明紋としては存在していましたが、米国の「星条旗」を「花旗」と呼んだように、☆が星を表すとは必ずしも言えなかったようです。明治初期にはこの形がとても新鮮に、かつアメリカの印象がとても強かったのではないでしょうか。
それはさておき、的川泰宣JAXA名誉教授が朝日新聞(2012年3月10日付)「宇宙がっこう」で「星の色にはどんな色があるの?」という質問に回答しています。今回は、それをもとに星の色と国旗の星について考えて見ましょう。
黄色い星
地球から見える天体で「黄色い星」といえば、うしかい座のアークトゥールス、ぎょしゃ座のカペラ、太陽や星でしょうか。木星は表面にメタンがあるので黄色の光を反射するのだそうです。
アジア・太平洋ではほかにフィリピン、マレーシア、ツバルの国旗が「黄色い星」です。
アフリカの国旗には「黄色い星」が多くアンゴラ、カーボベルデ、カメルーン、コンゴ民主共和国、赤道ギニア、中央アフリカ、ブルキナファソ、モザンビーク、モーリタニア、エチオピアの国旗がそうです。
ヨーロッパの国旗には星が珍しく、「黄色の星」となるとクロアチア、スロベニア、モルドバの三国の国旗に、注意深く見れば星があるという程度です。ですから、EU(欧州連合)の旗は特定のどこの国旗にも似ていないようにという配慮から12の「黄色い星」を輪のように配置しているのです。12というのは、当初のEC(欧州共同体)構成国の数であり、完璧さや充実を示す数であることもあり、現在28カ国もに増えたEUであるが、その数を変えていません。
南北アメリカでは、グレナダ、スリナム、パラグアイ、ボリビアの国旗に「黄色い星」が登場します。
したがって、全部の国旗の中では、以上23カ国、さらに1国際機構が「黄色い星」を描いた旗ということです。
赤い星
さそり座のアンタレースやオリオン座のべテルギウス、火星。火星はその表面に酸化鉄がいっぱいあるため赤い光を反射します。
国旗では、北朝鮮、アルジェリア、ジブチ、ジンバブエ、チュニジア、ニュージーランド(白で囲まれた赤い星)、ブルンジ(緑で囲まれた赤い六稜星)といったところです。また、社会主義政権時代のルーマニア、ブルガリア、1956年の「ハンガリー動乱」までのハンガリーの国旗が赤い星の入ったものでした。アルバニア、ユーゴスラビアはともに、「黄色で縁取られた赤い星」の付いた国旗でした。
青白い星
オリオン座のリゲル、おおいぬ座のシリウスなど。天王星も青味がかって見えます。
国旗で「青い星」と言えば、ホンジュラスの5つの「青い星」、イスラエルの大きな「ダビデの星」が浮かびますが、ほかにはパナマの2つの星のうち、1つが青いだけです。
白い星
国旗に出てくる星で一番多いのは「白い星」です。31か国に及びます。アジアではシンガポール、ミャンマー、東チモ-ル、パキスタン、トルコ、ヨルダンです。ヨルダンのみ「七稜星」です。これは「コーラン」の冒頭の聖句が7音節だからと言われています。
トルコの国旗には三日月とともに「白い星」があります。読者のみなさんにご教示いただきたいのですが、天体の星の形を世界中で☆と描くようになったのはなぜでしょうか?
ちなみに、高松塚をはじめ、日本の古墳や古い資料には星は☆ではなく〇で示されています。とても興味深いので、東京天文台にも問い合わせてみますが、みなさまのご意見をお待ちします。
大洋州には「白い星」の国旗が多いです。オーストラリア、ニュージーランド(白で縁取られた赤い星)、サモア、ソロモン、ナウル、パプアニューギニア、マーシャル、ミクロネシア、クック諸島です。
アフリカでは「白い星」を国旗に取り入れている例は少ないです。ソマリア、トーゴ、リベリアくらいでしょうか。「白い星」が白人というイメージを思い浮かばせるからかもしれません。
南北アメリアでは、何といってもアメリカ合衆国の50星、そしてその影響を受けてできたチリ(「白い星」1つ)、キューバ、ベネズエラ、ブラジルなどです。ブラジルの国旗には構成する26州と首都ブラジリアを表す27星が描かれています。
的川先生は紙面で
太陽のように自らの核融合反応で輝いている恒星の場合は、色の違いは表面温度の違いに由来します。恒星は圧力が高く、原子・イオン・電子がお互いに激しく作用し、広い波長域にまたがって光を吸収したり放出したりします。これらの星から放射するエネルギーの分布は、温度にしたがって切れ目のない色の分布(連続スペクトル)になります。
温度が低い星は放射エネルギーが低く、長い波長の光を発するから赤くなり、温度が高くなるにつれ短い波長の光へずれていくので、だんだんと青白く見えるのです。でも、緑とかピンクの星は見たことがないなあ。
と説明しておられます。ただ、質問している人の年令が4歳(愛知県・阪野円香さん)となっていますので、これはあまりに「人を見て法を説く」ことからは遠いのではないでしょうか。私への自戒の意味で一言、書き加えました。
「黒い星」はもちろん天体には見えません。国旗にのみ登場します。ガーナ、ギニアビサウ、サントーメ・プリンシペのアフリカにある3カ国の国旗です。
ピンクは星に限らず国旗には登場しませんが、「緑の星」はモロッコの「ソロモン(スレイマン)の星」、シリア、セネガルの国旗に見ることができます。そしてサダム・フセイン時代のイラクの国旗に登場していました。
的川先生は最後にとても面白い話を紹介しています。
米国のアニー・キャノンという女性天文学者は22万個の恒星のスペクトルを調べ、温度の高い順にO、B、A、F、G、K、M、R、N、Sの10の型に分類しました。これにH.N.ラッセルという人が、Oh, be a fine girl;kiss me right now, sweet. という語呂合わせを考えたそうです。頭文字が10の型になります。
的川先生は、別表で恒星の分類と表面温度のめやすを書いてくれています。すなわち、
青い星(O型)は30,000°C以上、
緑の星(B型)は9,400~29,000°C
白い星(A型)は7,000~9,300°C
黄色の星(F型)は5,800~6,900°C
薄い黄色の星(G型)は5,100~5,700°C
オレンジ色の星(K型)3,700~5,000°C
赤い星(M型)3,600°C以下
なのだそうです。
国旗を見ながら、星についていろいろ考えを巡らし、想像してみてください。